185 ゴブレット 彼女の親友 ページ45
水中騒動から一週間、Aは身をひそめるようにして生活をしていた。
幸いにしてAはホグワーツの生徒ではないため、あの義眼教授と必然的に顔を合わせることはなかったが、それでもホグワーツ城に訪れるたびに神経をピリピリとさせていた。
そしてそんな彼女の様子は見事に表に出ていたのだろう、行きかうものみんながAを微妙に避けながら通っていく。
しかしAはそんなことにかまっている暇はない。
するとずんずんと進んでいく自分の足音に、誰かの切羽詰まったような足音が重なった。
「A様、ちょっと、A様ったら！」
甲高い声が老化いっぱいに響くのを耳にしながら、Aは頬の筋肉がひくつくのを感じた。
「…シルビア…」
いやそうな表情のままで振り返れば、ぱあっと嬉しそうに輝くのは幼そうな少女の笑顔。
「A様！ようやく見つけましたわ、もうどこ探してもいないんですもの。
このシルビア、とっても心配したんですから。
さあ行きましょう、A様、皆様がお待ちになっていてよ。」
「ちょっとシルビア、」
なんでしょう、と笑顔で振り返る彼女のハニーブロンドの髪は、さらりとAの頬にあたる。
思いっきり手をつかまれていたAは、どうかしまして？と心配そうにのぞきこんだ彼女を前に、一瞬考えが飛んだ。
美人なAに対してシルビアの顔立ちはどちらかというと幼く、可愛らしい。
飴玉のような大きな瞳はきれいなエメラルドを思わせる。
ちょんとクリームの先をつついたような小鼻にはほんのりとそばかすが付き、薄いリップでも塗ったかのような淡いピンク色の口元は控えめだがぷっくりと膨らんでいる。
一言でいうなら、大人びた顔つきのAとはどこもかしこも対照的だ。
そして、一回口を開けば分かるが、その口調はものすごく、
「変だからやめて頂戴って言ったわよね、」
きっと睨み付ければ、ひっと肩をすくめるシルビア。
その動作一つ一つでも愛らしいのに、困ったような悲しい顔をされてはAが困る。
だが、それでもAはひるまずにつづけた。
「いい加減にして頂戴、私の名前に様をつけるのは…恥ずかしいし、おかしいわ。」
「いいえ、何もおかしなことなんてなくってよ。
あなたは私たちボーバトンの中でも並はずれて素晴らしい魔女なのだから、敬愛するに値する存在だわ。
様をつけなければ、私、呪われてしまうもの。」
大げさな、と心の中でつぶやいたAはもう一度ため息をつく。
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作者名：アサノ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月2日 16時
