180 ゴブレット ページ40
水底から伸び上がった蔦は二人の足首に絡んでいる。
「っ、」
焦りのせいか蔦はなかなか解けない。
手に持っていた杖を振るってロンの蔦を解いたハリー。
次にハーマイオニーを手を伸ばすと、マーピープルの槍がハリーの喉元に当てられる。
［助けられるのは一人だけだ。］
英語に語りかけているのか若干の訛りを残したマーピープルの言葉は、かろうじてハリーにも理解できた。
「友達なんだ。」
「これは規則だ。」
「でも、」
押し問答が続く中、チョウ・チャンの元にも現れるひとりの青年。
セドリック・ディゴリーは彼女の蔦を外して、さっと水面に向かった。
振り向きざまハリーを見つめたセドリックの瞳は、君はどうすると語っていたが、先に行ってと首を横に降るハリー。
ようやくこの競技の趣旨が理解できたハリーは、唐突にAを思い出した。
逃げてとだけ言って離してきてしまったAが今頃どうなっているか、ざわりと胸に不安がよぎる。
ロンは親友であるハリーが、
チョウ・チャン、ハーマイオニーはクリスマスのパートナーであったセドリックと、ビクトールが。
そしてハロウィンに見かけた銀髪の少女はフラーの妹、
なら、あそこで見つけたAは…
刻々と時間だけが経っていく中、ハーマイオニーは遅れてやってきたビクトールが攫っていく。
獰猛な鮫に頭部を変身させたビクトールはちらりとハリーを一瞥するだけで、さっさと浮上してしまう。
「っ、」
途端、首元を締め付けられ様に呼吸がしづらくなる。
一瞬だが手足にも突き刺さる様な痛みを覚えた。
おそらく薬草の効果が切れかかっているのだろう。
「(冗談じゃないぞ…フラーはまだなのか？)」
辺りを見渡すがあの銀髪はどこにも姿を現さない。
焦れたハリーがマーピープルに手出しされるより先に、ビシッと蔦を引き裂く。
細い少女の腕を引っ張って、水面に向かおうとするとぐっといきなり肩が揺らいだ。
見れば追いついたマーピープルがこぞってハリーに襲いかかっていた。
無我夢中で振りほどこうとするが両脇にいる二人が重荷になって、身動きが取れない。
杖を振ろうとしたその刹那、淡い光がハリー達を丸ごと包み込んだ。
かと思えば、ぶわりと視界を視界が歪み、まるでシャボンにでも写ったかの様に水の中の景色が歪む。
ハリーの足についていた鰭と、エラがなくなった瞬間、その正体がわかった。
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作者名：アサノ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月2日 16時
