177 ゴブレット 謎の男 ページ37
皆嘘つきでしょうね…
核心を突いた様な戯れ言は、Aの耳元にこびり付いていた。
おかげで次の試験に向けてハリーと打ち合わせをしていると言うのに、その意識は遥か彼方。
傍らのハーマイオニーも不思議そうにAの横顔を見つめている。
「あの、A？」
「＿＿＿え、あ何かしら？」
やはり不自然過ぎるその反応に二人は顔を見合わせ、
「「疲れてるの？」」
と気遣わしげに眉をひそめた。
「いいえ、ちょっと考え事をしていただけよ、
それで？水中で息をし続ける方法、分かったの？」
「嫌…何も分かってない。」
しゅんと肩を落としたハリーに、Aは一考した。
本当は水中の息をする方法はあるのだ、しかし必ず成功するとは限らないし上級魔法を事前にAが唱える訳にも行かない、
おまけに…
「(また居るわね…)」
本を読む訳でもなく、書き物をしに来た訳でもない男が一人。
じいっとA達を見つめている、いや正確に言うならハリーを見つめている。
話しに寄れば、ドラコが絡んだ時もすかさずあの男が間に入ったとか。
ダンブルドアの級友でありながら、初対面の人間が必ず不信感を抱くその男のなりは、イマイチ信頼出来ないきな臭さが漂う。
「(ダンブルドアの命令なのかは知らないけれど、気に喰わないわね…)」
ハリーから聞く限り、男にはある程度信頼しているらしい。
ぎゅっと額に眉を寄せたAは、資料が無いかどうか探してくるわねと席を立つ。
カチと時計の長身が傾き、試験への時刻を刻々と迫らせる。
後数時間後には指定された湖まで行かなければならない。
「(うかうかしてられないわね、)」
と目の前にあった本を手に取ると、向こう側から目ん玉が見えた。
「ひ、」
思わず一歩後ずさりすると、眼球はぐるりと一周し、再びAに視線を戻した。
瞬き一つしないその眼球はフッと本棚の向こうに消えたかと思えば、こつんと足音を立ててこちらに戻ってくる。
「これはMs.マロニエ、驚かせてしまったようで申し訳ない。」
全く悪いと思っていないだろう顔は、にやりと嫌らしく歪む。
わざわざAが本を取るのを待ってから、向かい側の本を引き抜き、Aを驚かせようとしていたなんて故意以外の何者でもない。
「それは、嫌味ですか？」
「嫌何、たまたま向かい側の本を取ろうとしたらお前さんの顔が見えただけだ。
何も、他意は無い。」
念を押すように力強く言われてもAは怪訝そうに顔をしかめるだけ。
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作者名：アサノ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月2日 16時
