175 ゴブレット さあて策士は如何に ページ35
「(成る程…あれを彼女に聞かせるわけにはいかないよな。)」
ふっと鼻で笑ったアルフは談笑している二人を見守りながらも、その眉をすっと寄せる。
「(どちらにしろ、Aの正体がわからないことには判断はできないな。)」
継承者、
写真、
アッシュブロンドに淡いブルーの瞳、
若い女、
そして、ゲラート・グリンデルバルトの右腕
脳内にいくつかインプットしたアルフは音もなくその場を立ち去った。
誰かが立ち去る気配をそっと横目で一瞥したAだが、何事もなかったかのようにすくっと立ち上がる。
「介抱してくれてありがとう、それじゃあ。」
「待て。」
くるりと背を向けた拍子にパシッと取られた手。
特に照れる様子も見せず振り返った彼女は、何、とめんどくさそうに顔をしかめる。
「送っていく。
暗いからな。」
「…そう。」
ほんのりと湧き上がった警戒心を頭の隅に追いやったAは、ドラコの隣に大人しくついていく。
だが、向かう先はなぜか外のボーバトンの馬車ではなく、グリフィンドール寮の入り口。
「ねえ、貴方、向かう先が違ってるわよ。」
「いや合ってる。
そうだろ、A。」
え？
空虚な言葉は切なげに振り返ったドラコの表情を前に、ぐっと飲み込んだ。
「今日、ずっと君を見てた。
グリーン・キャクタスのドレスを選んだ理由も、僕のそばにいながらわざと遠ざける理由も、ポッターを守る理由も、結局分からなかった。
だけど今日一つだけ確信したのは、君はここを
不自然なくらいにな。
例えば、
グリフィンドールの尖塔の居場所も、
喋る絵のことも、
夜中徘徊しているホグワーツのゴーストのことも、」
唐突な指摘にAは足元が凍りつく感触を覚える。
血の気がひいた指先は色が抜け、ぎゅううっと痛いくらいに爪が皮膚に食い込む。
ドラコの視線はさらに軽蔑めいたものが混じる。
「なあ、はぐらかすのはもうやめてくれ。
君が白状しないのなら、ポッターに直接聞く、
それが嫌ならここで答えろ。
君は何者だ。」
真剣みを帯びた灰色の瞳とかち合う。
ごくんと喉が上下し、Aは口を開いた。
「このドレスを選んだのは貴方が好きそうな色だからよ、ドラコ。
貴方を遠ざけるのも貴方に知られなくないことがあるから、
ハリーを守るのは私の意地。
だから、こんなくだらない女の正体なんか、知らなくていいわ。」
くしゃりと泣きそうな顔になったAは、切なそうに表情を歪める。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アサノ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月2日 16時
