166 ゴブレット キャクタスのドレス ページ26
グリフィンドールのネビル・ロングボトムは、珍しく寮にも帰らず、パートナーのジニーと夜を明かしていた。
とは言っても互いに他愛もないおしゃべりをしたり、ほかのパートナーとおふざけで遊んだり、そんな程度だ。
しかし、この時刻になっても一層際立って存在感のある女性がいた。
アッシュブロンドに淡いアメジストの宝石を光らせた彼女は、キャクタス・グリーンの裾を優雅になびかせ何かを見つめている。
「…なんだろ。」
ポツリと人ごとのように漏れた瞬間ネビルの足はそっちに向かっていた。
コツンと、静かな空気の中それは響いた。
「誰、」
反射的に振り返ったAの表情は、若干の焦りと警戒心が混じった、なんとも言えない表情だった。
敢えて言うならパーティーを楽しんでいる、と言う顔ではない。
「さっきから何見てるの？」
「…ネビル、」
ふらりとやって来たネビルは当たり前のようにAの隣に並んだ。
彼女と同じ方向を見れば、見下ろした先にあるのはグリフィンドールの寮がある尖塔。
「……あんなの見てて楽しいの？」
「…そうね、楽しいとは言えないわね。」
困ったようにふふと笑った彼女は、ネビルの顔を観察する。
前にあった時は、確か真正面から誰？と聞かれた時だったろうか。
あれから一年近く経っているとは思えず、Aはなんとも言えない表情になる。
「変なの、」
「何が変なの？」
「だって君さっきから変な顔してるから。」
「そうね、あなたが変なことばかり言うからよ。」
さらりと逃げた彼女は、メリークリスマス、そう言うとするが、そうするより先にAの手は、ネビルの手の中に収まった。
「僕の名前も知ってた。
初めて会う筈なのに、なんでかな、君に名前を呼ばれると変な感じがしないよ。
やっぱり君は変だよ。」
ふわ、と子供が何か発見したような表情で微笑むネビルに、Aは思わず全身の力みを抜いていた。
いつもなら飛び出てくる筈の都合の良い言い訳も、御機嫌ようと白々しく折ってしまう腰も、薄っぺらい笑顔も、
なぜかネビルの笑顔を見た瞬間、全部引っ込んでしまう。
代わりに出て来たのは、どうしようもなく取り繕えない、哀れな、自己嫌悪にまみれた泣きそうな顔だけ。
「…ネビル、」
「うん、なぁに。」
ふわり、
決して美丈夫な顔立ちとは言えないが、その笑顔には何故か安堵してしまう。
「、なんでもないの、さよなら、」
くるりと背を向けた瞬間、掴まれていた手はあっけなく離れた。
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作者名：アサノ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月2日 16時
