164 ゴブレット 聖なる夜に ページ24
華やかな夜、神聖なるクリスマスの夜はいつもとは違う雰囲気の中、催された。
着飾る少女たち、浮き足立った調子でパートナーを待つ少年たち。
日常とは違う雰囲気の中、彼らはその日の夜を楽しんでいた。
が、どこにでも例外というのはある。
アッシュブロンドをさらりと結い上げ、アメジストの宝石を惜しみなく輝かせ、グリーン調の中でもキャクタスカラーのドレスを選んだ彼女はこの非日常を楽しむことはなかった。
一人壁に背を預け、たった一人の少年に熱い視線を注いでいる。
視線の先にいるのはこのホグワーツ校の英雄とも名高い少年だ。
当の本人はこのパーティーを楽しんでいるようには見えない。
そわそわと落ち着きがなく、黒髪の彼女ばかりに視線を送っている彼を見つめること数分。
「はあ…」
大きなため息を吐いた彼女は、イライラと殺気立っている隣の彼をじろりと見上げた。
「Mr.マルフォイ、いい加減にその殺気、なんとかできないのかしら？」
「ああ、当分は無理だろうな。」
「しまう努力もしないの？」
「見返りがないのにする必要性もない。」
ブスッとした顔のドラコは、ふいと駄々をこねる子供のように顔を背けた。
「あのねえ…」
「当たり前だろ、パーティーに来て踊りもせずに、こんなところに立たされ続けてたら誰だってイライラする。」
「だから、貴方は別にいいって言ってるじゃない。」
そう、他でもないイライラの根源はAの所為だった。
彼女はハリーの護衛に集中するためとドラコを引っ張っておきながら、在ろう事か要らないと言って追い返そうとしたのだ。
「だったら僕に協力するように言ったのは何故だ。」
もっともな理由にグッと言葉を詰まらせるAだが、まだそこは耐える。
「パートナーがいなきゃパーティー会場に入れないじゃない。」
「だったら僕はお飾り代わりか。
呆れたやつだな、軽蔑するぞ。」
「そう言う女だってわかってたでしょう？
今更ね。」
いっそ清々しいレベルで開き直ったAは、嫌悪感まみれの瞳で見下ろしてくるドラコを睨みつけた。
なんとも言えない空気が漂う中、今度はAの方が視線を落とす。
「…それに、貴方なら一々うるさく聞いてこないでしょう。」
ボソリと、会場のざわめきに混じってしまうような小声だが、なんの呪いかそれは確かにドラコの耳の届いた。
色素の薄いダークグレーの瞳がそろりと彼女を盗み見るが、反省はしているのかその視線は交わらない。
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作者名：アサノ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月2日 16時
