160 ゴブレット ページ20
「はあ？
お前あんだけ魘されてて自覚ないのか？」
「だからなんの話だ。」
「…」
焦れて若干怒気が混じるドラコの言葉を無視し、セオドールはじいっとドラコを睨みつけていた。
「ふざけてるわけではないか。」
「ふざけているのは貴様の方だろ。」
言葉に言葉で返す。
ドラコの口角がひくつく瞬間、ノットはようやく口を開いた。
「お前が見ているのが悪夢かそうでないかは知らないが、とにかくいつも魘されながら、言ってるんだよ。
A、Aってな。」
すうっと灰色の目が面白いくらいに見開かれたのを、セオドールは呆れと嘲笑の眼差しで見つめた。
「なんだ気がついていなかったのか。
まあAって言えば、あのボーバトンの名高い美少女だろ。
相手がどうだか知らないが、マルフォイ家の名前を出せばホイホイついてくるんじゃないか。」
ニヤリと笑ったセオドールは二度寝を決め込む気なのか、せっかく起き上がってのにもかかわらずその体を再びベッドに沈めた。
呆然としたままのドラコは一つと息を吸った後、小さく呟いた。
「…嘘だろ。」
と。
朝からモヤモヤさせられたドラコは朝食までの時間をどう潰そうか、まったく考えずに談話室に降りてきた。
するとガラス張りの天井から、水を通して燦々と場内を照らす明かりが目に飛び込む。
「、」
鬱陶しそうに手を額にかざしたドラコは、何気なしに天井を見上げたその瞬間、ちらりと視界に映ったアッシュブロンドの髪にドラコは凍りついた。
死人のように真っ青な顔で見下ろしている少女の瞼は、固く閉じられている。
真っ白なネグリジェがゆらゆらと水に揺られる中、ふわりとアッシュブロンの髪が一瞬その死人の顔を覆った。
「嘘だっ、」
駆け出したその瞬間、ぐらりとつんのめる。
ぶつかる、
心の中でそう思っていても間に合わない。
ぎゅっと目をつぶったその刹那、ぐいっと首ごと引っ張られドラコは一瞬呼吸に詰まった。
「…何をやってるの？」
心底不思議そうな声はドラコの心臓を止める効果としては、抜群だった。
ローブを掴まれた格好のままグリンと首だけ振り返ったドラコは、は？と魂の抜けたような声をあげた。
「会いにきてみれば唐突に目の前で転ぶんですもの、
びっくりとしたわ。」
呆れたような声でけらけらと笑った彼女を10秒、たっぷり見つめたドラコはその顔を両手で荒々しく掴んだ。
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作者名：アサノ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月2日 16時
