159 ゴブレット ページ19
ドラコはやりようのない気持ちを持て余したまま、冬を迎えた。
チリチリと冷たい吹雪がほおにあたる中、眼前に佇むのは二つの影。
寄り添うように手を取り合った二人はドラコにも気がつかず、その距離をゆっくりと詰める。
「？」
最初は誰なのか見当もつかなかったドラコ。
汚物でも見るように顔をしかめるが、ふわりと白い絶景に舞うアッシュブロンドを認め、目を見開いた。
「っ、」
とっさに駆け出した足が、ずぐりと雪にとらわれる。
そのままずぶずぶと底なし沼のように沈んで行く体は、ドラコの言うことを聞かない。
「くそ、」
英国紳士らしからぬ言葉も虚しく、ドラコの体はついに胸のあたりまで雪が覆い尽くす。
必死に空を掻く手は、目の前の二人をとらえることはできない。
ゼロ距離になる寸前、
ちらりと動いた視線。
居すくまれるような、淡いブルーの瞳がひんやりと温度ない目でドラコを見下ろした。
「これが、答えよ。」
にっこりと弧を描いたその唇は、やがてゆっくりと塞がれた。
「っ〜〜〜〜」
言葉にならないとはこのことか。
がばりと体を起こしたドラコは、全身から冷や汗をかいていた。
「…」
荒い息こそ吐かなかったが、心臓はうるさかった。
何時ぞやか、謎の少女の夢を見たあの時と今の状態はよく似ていた。
寝ても醒めても忘れられない、摩訶不可思議で論理的説明が成り立たない未知の領域
どれだけ言葉を並べ自分を納得させても、何度経験してもドラコには堪え難い感覚だ。
どくどくとうるさい心臓の音を、上質の寝間着の上からグッと抑え込む。
目を閉じて、ゆっくりと一つ深呼吸。
目を開けた時、ようやく目の前の景色が戻ってきた。
「…なんだまた魘されていたのか。」
人一人の呼吸音すら拾えるほどの静かな空間に、やはり静かな言葉が響く。
恨めしげな視線でドラコが振り返れば、同室の男がこちらを見ていた。
「今日で何度目だ。
お前と一緒に起こされるのなんか、こっちは勘弁したいんだがな。」
「ふん、言ってろ。」
あいにくと友人と言えるほど親密な関係ではないドラコは、セオドール・ノットの文句を右から左に流していた。
対してベッドにへばりついているセオドールは、迷惑そうに毛布を被り、もぞもぞと口を動かした。
「そんなに気になるんだったら、その女子と組めばいいだろうが。」
「は？女子、組む？？なんの話だ。」
わけがわからないと首をかしげるドラコに、今度はセオドールが跳ね上がった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アサノ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月2日 16時
