158 ゴブレット 緩やかな変化 ページ18
三大魔法学校対抗試合に、4人の選手が出場することになった。
一人はボーバトン生のフラー、一人はダームストラング生のビクトール、一人はホグワーツ生のセドリック、そして最後の一人が、ホグワーツ生のハリー。
この異常な結末は、生徒全体に動揺をもたらした。
ある人はズルをしたといい、
ある人は図々しいといい、
ある人は自業自得だといい、
ある人は可哀想にといい、
ある人は信じられないといい、
ある人はどうやったのだと言う。
誰もかれもがハリーを疑った。
信じるといった人もまた、疑いの視線は隠そうともしなかった。
第1の競技を目前に控えた頃、ハリーは鬱々とした顔のまま外へ出た。
ハグリットから透明マントを持って来いといわれ、来てみればびっくり仰天。
勇猛果敢なライオンのタペストリーにも負けない、荒々しいドラゴン達がそこに居たからだ。
ついでにハグリット達の逢い引きも目撃してしまったが、それはハリーにとってはどうでも良かった。
二人っきりの世界に入ってしまったハグリット達を置いてきたハリーは、急に全身から熱が抜けた様な心地になった。
あれだけ興奮して居たのに、残ったのは漠然とした不安だけ。
「(兎に角、セドリックにも伝えないと…)」
元来のお人好し精神が発動したハリーは、とりあえず立って歩く努力だけはした。
が、如何にもこうにも足は前には進まない。
覚悟は出来た？
記憶の中の彼女が不敵に笑う。
「(知るもんか、覚悟なんて、)」
半ばヤケになっていたハリーは、バサリと羽織っていたマントを脱いだ。
「あら、そこに居たのね。」
真後ろから聞きなれた声、反射的に杖を握ったハリーが振り返ると、声の主はニコリとした笑顔でハリーの喉元にその切っ先を突きつけた。
「ドラゴンの牙が入ってるの、コレ。
貴方の喉も斬り裂けるかしら？」
冗談とも思えない声色で尋ねる彼女は酷く愉快そうだ。
「ねえ、覚悟は出来た？」
さらりと揺れたアッシュブロンド、惹きつけて離さない淡いブルーの瞳。
奥底まで覗き込んでくるその視線に、ハリーはついに折れた様に頷いた。
ーーーー
散々罵倒するだけしていたハリーに、小さな異変が起きたことにドラコは気に食わなかった。
視線の向かう先はアッシュブロンドの彼女。
ハリーの元に案内してと頼んだ彼女は、結局ドラコの欲しいものを何一つとして渡していない。
「(、チッ、このまま逃げるのかよ。)」
色白の指先に、赤い爪痕が強く残っていた。
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作者名：アサノ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月2日 16時
