157 ゴブレット 眠れない夜 ページ17
命を懸けて信頼して欲しい。
そう宣った彼女の言葉を、ハリーは夜、眠れないベッドの上で何度も考えていた。
怪しげな雰囲気を浮かべた彼女はその後、するりとハリーから距離を取り、
「まあ、私としては完全に他人事だから、どうでもいいのだけれどね。」
ふーふん、なんて鼻歌吹きながら何でもないような顔で立ち去った。
その後思い出したように振り返って、
「でもまあ、何となく覚悟が決まったら教えて欲しいわ。」
と不敵に笑った彼女は今度こそ振り返らずに立ち去った。
「(覚悟って、何の覚悟だ？)」
自問自答するハリーの思考を遮るように、ロンのいびきが響く。
ムッと顔をしかめたハリーは、ごろりと寝返って毛布を頭から被る。
そして何となく、本当にただの気まぐれで、
「われ、ここに誓う、われ、良からぬことをたくらぬことをものなり。」
ボロボロの羊皮紙に、文字が浮かび、微かなインクの匂いもする。
現れた文字たちは昼間の煩さが嘘の様に寝静まり、ゴーストや監督教員の足跡のみにひっそりと付いている。
勿論それ以外に足跡はない。
「(なーんてね、、)」
誰を探していたのやら、
ハリーは若干がっかりもしていたが、安堵の表情を浮かべ、そっと忍びの地図を閉じようとすると、
一つだけ見慣れない足跡を、いや文字を見つけた。
［クラリス・マロニエ］
辛うじて読み取れたその文字は、信じられないことに校長室のど真ん中に鎮座していた。
クラリス・マロニエと言えば、昼に出会った彼女が命を懸けて探していると言っていた、尋ね人ではないか。
それがなにをどう罷り間違ってこんな所にいるのか。
一瞬状況が飲み込めなかったハリーもまた、ブルリと背が震えた事でようやく正気に戻った。
「、と、とりあえず、、」
追わないと…
そう慌てて身体を起こしたその瞬間、再び信じられない事が起きた。
ハリーの目の前で、その文字はふわりと煙の様に消えたのだ。
「え、何で消えて、、、」
何か見えない力でも働いたのか、それとも地図が感知できない部屋にでも滑り込んだのか。
凡ゆる可能性が浮かぶが、生憎と消えてしまったその場所は、かの有名なアルバス・ダンブルドアの自室だ。
「何で？」
消えてしまったその場所をハリーはいつまでも見つめていた。
翌日には三代魔法学校の代表選手が決まるその頃。
ハリーは校長室に気を取られ、肝心の不穏な影になど、微塵も気がついては居なかった。
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作者名：アサノ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月2日 16時
