156 ゴブレット ページ16
「そう、
私たちマロニエにとって無くてはならない人。
私は両親から彼女の捜索を命じられたの。
それを、“A”は、全て知っていた…」
饒舌になっていたかと思えば、急に黙り始めたAを、3人は静かに待った。
『取引しましょう。
貴方がハリーの事を、一年、命を懸けて守ってくれたら、私はクラリス・マロニエの一切について明かすわ。
大丈夫よ、一年も経てば全てお膳立てしておくわ。
ね、だから、ハリーを守って。』
真摯に頼み込んでくる“A“についにAは折れたらしい。
そしてAは学年を飛び越えて、上級生すら上回る魔法の持ち主。
そんな彼女に元から他校への留学許可が与えられていたとか。
夏も終わりのその頃、その場で出会った少女ととんでもない取引をしたAは、自分に当てられていた留学期間を四年生の一年に使ったのだと言う。
「私が出会ったその“A”という少女は、恐らく私のことを全て知っていたのね。
私に一年の留学が与えられていることも、私がクラリス・マロニエを追っていることも。
そしていきなり貴女たちの前に現れる私に気を遣って、
彼女はとんでもないものを差し出した。」
一旦区切りを置いたAに、ハーマイオニー達は目を見開いた。
ここまでくれば皆まで言わずともわかる。
Aと言う存在をわざわざ突き止めた”A“は…
「私が向こうで不自由しないように、そしてハリーだけに告げた真意を他の人に悟られまいと、
彼女は自分の記憶を持っているホグワーツの関係者、全てに、忘却呪文がかかるように私と破れぬ誓いを結んだ。」
破れぬ誓い、そう聞いた瞬間、ロンは驚いたように目を見開いた。
「知ってる、僕、破れぬ誓いって、あれだろ、結んだ約束が守れないとお互いに…」
「そう、死ぬの。」
あっさりと告げたAに、3人は動揺を露わにした。
それもそうだ。
最初はただの約束事の話だったのに、それがいつの間にか命の話になっている。
だが戸惑う3人をよそに、Aの目は覚悟を決めたように揺るがない。
「だから、私も彼女も命をかけているの。
貴女を守ることも、クラリス・マロニエを追うことも。
だから、ハリー、
貴女も私を信頼して欲しいの。」
命を懸けて、
ひっそりとけれど恐ろしいほど冷静な口調の彼女に、ハリーは彼女の手がすっかり冷え切っていることしかわからなかった。
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作者名：アサノ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月2日 16時
