151 ゴブレット ページ11
「そう。」
と瞬間興味を失ったように顔をそむけた彼女に、ハリーは張りつめていた息を一気に抜いた。
だがAはこれだけで手を緩めるような女性ではないことを、彼は知らなかった。
「じゃあここから先が本題だけど、あなたの知り合いに私とよく似た髪と目の色をした、愛想のいい70を過ぎたおばあさんはいないかしら。」
にっこりと、けれどどことなく穏やかでない笑顔の彼女は、再びハリーに詰め寄った。
「ええ？！君によく似たおばあさん？」
「そう。
プラチナに近いアッシュブロンドに、淡いブルーの瞳を持って、一見人がよさそうだけれど、実はとんでもなく自分勝手でわがままな人よ。
それこそ無茶な事だって平気でやってしまうような人なんだから。」
「君によく似て、それでいて自分勝手な人？」
「そう。
あなたの近くをうろついていたり、唐突にナンパしてきたりしなかった？」
「さ、されてないよ。それに僕の身近にそんなおばあさんはいないよ。」
「あっそう、」
と、呆気なくそっぽを向いた彼女にハリーは完全に混乱していた。
最初は綺麗な女性なのかと思ったら、次は有無を言わさず質問に答えさせ、かと思えばかなり私怨の混じった言葉の羅列。
どこから突っ込んでいいのかわからないハリーを完全において行っているAは、さらにハリーを突き放すように真顔で尋ねた。
「それとクラリス・マロニエって名前聞いたことないかしら。」
唐突に唐突もいいところだ、とりあえず彼女の問答を遮ったらダメだと直感で判断したハリーは、ないよと即答した。
「そう。」
「そのクラリスさんは君の親戚なのかい？」
「そうね、まあ、そんなところね。」
今まではっきり態度に示していただけあって、やけに言葉を濁すAに、ハリーは少し疑問に感じた。
「じゃあ今度は僕が聞いていいかな？」
「ええどうぞ。
けど手短に一つだけにして。」
俯きかけていた顔を上げ、まっすぐ自分を見つめてくるAに、ハリーは自然と目が離せなった。
この少女が自分で今まで猫をかぶっていたのはハリーにだってわかっていた、が、目の前の彼女のほうがどうしてかハリーにはしっくりきていた。
一目惚れだとかそんな簡単な言葉では済ませない、言葉にできない違和感があった。
ハリーは二つあるうちの一つを選んだ。
「君はいったい何者なの？」
的を射た質問だったのか、それとも予想通りの質問だったのか、にっこりとほほ笑んだ彼女は、
「ただの魔女よ。」
とだけ答えた。
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作者名：アサノ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月2日 16時
