何気ない日常を… (ページ9)

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疑惑【レイ】ページ9

「(何やってんだ？あいつ。)」

ふとした時だった。
例のごとく逃げ出したヨンリを追いかけていたレイは、不可思議なものを目にした。
大木の根っこにただじっと座り込んでいるヨンリ。
好都合だと思ったレイが近づいたその時。

ガバリと現れたのはアルフの野郎だった。

「？！」

訳がわからず思わず足を止めたレイの目の前で、何やら言い合いを始める2人。
最後にはレイのやつが何か怒鳴り散らして立ち去る始末。

呆然として微動だにしない彼女の元に駆け寄ったレイに、ヨンリは僅かに赤くなった頬っぺたで、

「meはいつかアルフに襲われるかもしれない、、」

といきなり訳のわからないことを宣った。
はあ？と言うように眉をひそめたレイに、ヨンリは不安げに顔を上げた。
パッチリとした二重から覗く赤みがかった瞳はらしくもなく揺れている。

「おいヨンリ、大丈夫か？」

思わず引き寄せた肩は僅か、本当にほんの少しだけ揺れて、レイが覗き込んだ事でその揺れはピタリと止まり、

「う、うん！
meなら大丈夫だよ！！」

と普段の調子の笑顔を振る舞う。

「(あいつ、ヨンリになにしたんだ？)」

と最後に残った疑問を胸に、レイは当然の様に暴れ回るヨンリを、大広間へと連れて行った。

ーーー

あの騒動からどれくらい経ったか知らないが、アルフは殆ど確信していた。

冷え込む朝、芋虫の様なヨンリを表に引きずり出し最終手段として俵担ぎにしていた最中だった。

「日頃から頭の湧いてる奴だと思っていたが、パンツの趣味まで微妙だな、ヨンリ。」

悪魔と錯覚させるほど、嫌味な言葉を発するのは例の野郎だった。
忙しいのに無駄なことしかしないアルフにキレたレイ。

本気で押し通ろうかと考えたとした瞬間、本気で脇腹を蹴られた。
いつもとは違ってしっかり急所に入るように。

「っ、？！」

お陰で呼吸すらままならないでいると、当然のようにヨンリを掬い上げたアルフ。
おまけに騒いでいた例のパンツが見えないように、さりげなくスカートを手で押さえている。

「まあな日頃の礼だ、せいぜいありがたく受け取れ。」

とヨンリを抱えたまま涼しい顔で立ち去る始末。

「待てよ、アルフ、」

立ち上がって追いかけた頃には、大広間から悠々とした足取りで出てくるアルフと遭遇。
呼び止めようとしたその時、レイは思い出した。
大広間に向かう最中、わざわざ“正面”からやってきたアルフを。

「(まさか、あいつ、、)」

疑惑に疑惑が募り確信まで後もう一歩。