何気ない日常を… (ページ39)

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入学式【アルフ・ヨンリ】ページ39

蝋燭たちが天井を彩る中、登場したのは真新しいローブを身にまとった一年生たち。
上級生たちに盛大に迎えられた彼らはそわそわと落ち着きがない。
ことさら前のほうで危なっかしい足取りで歩いている少女なんて、尚のことだ。

数列に別れた彼らが、組み分けに参加するその時、ヨンリは遠目から先ほどの少年を見つけた。
さらさらとした黒髪が揺れ、飴色の瞳が油断ない目つきになっているがどことなくその焦点は合っていない。

一言でいうならものすごく暇そうで、目の前の入学式なんて何も見えていないような顔になっていた。

「(ふう～ん)」

さっきのお返し、というわけではないが単純に名前が知りたかったヨンリは、そろそろとその背後に近づく。
あともうちょっと、というところで、

「アルフ・デビット！」

声高に呼ばれたその名前に、目の前の少年は黙って動いてしまう。

「あ、、」

声もかける間もなくすとんと腰かけた彼は、ちらりとこちらを見たかと思えばにやりと、ヨンリだけにわかるように口角を上げる。
つまり、アルフと呼ばれた彼はヨンリが後ろから近づくのを知っていて、あえて無視していたのだ。

「スリザリンッ！」

さして時間もかからずに寮を叫ばれた彼は、すくっと立ち上がって壇上から降りる。
すっと隣を通り過ぎる彼は、ヨンリに向かってその耳元に小さく囁いた。

「ずっと見てたよな、変態。」

まず女の子に言うべきセリフではないとんでもない暴言を前に、ヨンリは固まったように見えた。

「ついでにこのまま一緒に来るか？」

完全に相手をからかうだけのとどめのセリフに、アルフは満足そうな表情で寮へと向かおうとすると、

「待って。」

ぐいっと何故だか思いっきりローブの袖を引かれてしまうアルフ。
あ”？と不機嫌そうに振り返ったアルフは、泣かせたかと一瞬考え込んだが、それは杞憂に終わった。

「大丈夫、meもスリザリンに行くから後で行くね！」

何が大丈夫なのか、後でとはどういう意味なのか、とりあえずローブを離せこの野郎と思っていたアルフ。
そんな彼らの頭上では、しかめっ面のマクゴナガルがさっさと席に行けと、無言の圧をかけている。

どれもこれも鬱陶しく感じたアルフはわずかに顔をしかめ、そうかよと荒々しい足取りでヨンリの手を振り払った。

その後、ヨンリの名前が呼ばれたが、秒でグリフィンドールッと叫ばれたのは言うまでない。

しかしアルフがこの時どんな顔をしていたかは、誰も知らなかった。