何気ない日常を… (ページ36)

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列車【ヨンリ・アルフ】ページ36

「えーい！」
軽やかな言葉と同時に柱にぶつかりに行けば、勢いがありすぎたらしい。

「あ」
「は？」
ｶﾞｯｼｬｰﾝ!

向こうには、人がいてどうやらmeはその人に思いっきりぶつかって行ってしまったらしい。

かわす暇がないほど勢いのついたmeの不意打ちに相手は尻もちをついた。
「ごっめんねぇ！怪我はない？痛いところは？死にそう？」
「いや、死なないよ。大丈……夫」

心配して声をかければ、相手は勢いよく立ち上がった。
meの視界に写ったのは長い黒髪。赤い瞳。
その瞳がmeの赤い瞳とあう。めっずらしい赤に相手も少し驚いたように目を見開いた。

だが、そんなことmeの知ったることではない。
ジロジロと人を見てくるなんて、紳士としてどうかと思う。失礼な奴だ！

ジロジロと見てくる黒長髪野郎に頭突きをかまして、立ち上がる。
そのまま逃げた。それゆけ、me!兎のごとく！

そして、そのままホグワーツ魔法魔術学校行きの列車に飛び乗る。周りにジロジロ、クスクス笑われて恥ずかしかったのだ。

目立たない、目立たない。
ただでさえ、meの金髪と赤い瞳は目立つ。ミッシェル家というのも目立つ。
……ヤダ、meって人気者？

一人、心の中で漫才をしながらコンパートメントを探すことにした。

「……な、何だったんだ？」
ジクジクと痛む額と尻。その痛みが現実であることを教えてくれる。

紳士とよく言われるレイは突然の出来事に困惑していた。

「(出会い頭に頭突きって……頭突きって、どうなんだ？)」

立ち上がって、砂埃を払う。そして、もうすぐ出発するであろう列車に乗る。
周りでクスクスとレイの事を嗤う輩がいたが、それを彼は知らなかった。

後に、犬猿の仲となる輩が見ていたのを知らなかったのだ。
飴色の瞳がユラリと何かを見極める蛇のように目を細めている。