何気ない日常を… (ページ25)

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逃げ【ヨンリ・アルフ】ページ25

見られた見られた見られた。

スリザリンの寮に行かなければ良かった。
アルフを挑発しなければ良かった。
あの時走って逃げなければ良かった。

アルフに手を。
正確には、手にある火傷を見られた。
ポロポロと瞳から零れ落ちる雫を気にせず、ヨンリはベットの中で後悔した。
「嫌だ、怖い、…怖いなぁ。」

アルフに気味悪がられて、遠くに行かれるのは怖い。
ヨンリの右手には、大き目の火傷の後がある。
濃い茶色で触れば固くシワが寄っている。
何が怖いのかと聞かれれば、ヨンリは心の中で答えるのだろう。

「火傷の理由を聞かれるのが怖い。」
「meの過去を聞かれるのが怖い。」
「それを聞かれて離れていかれるのが怖い。」

で、結果的にmeは逃げた。
鉢合わせをする前に、情報を酷使して会わないようにした。

仮にあったとしても、目が合う前に(と言うか合わないように)逃げた。
「ちょっと、ヨンリ。どうしたのよ？アルフと喧嘩でもした？」
同じ部屋のウェンディーに聞かれて言葉に詰まる。
喧嘩はしてない、はず。でもでも、言い争いの最中に話さなくなったし。

「あっと…、どうなのかな？」
ヘラリ、と軽く笑って誤魔化せばウェンディーは怪訝な顔をした。
けれども、ヨンリにはそれ以上聞かなかった。

ウェンディーはヨンリには聞かなかったが、レイには聞いた。
「知るか、アイツとヨンリが関わらなくなったんだろ？…グリフィンドールから見れば、いい事なんじゃないか？」

確かに、現在のグリフィンドールとスリザリンの仲はいいとはいけない。
あのひとの思考を飛び越えるヨンリと悪魔の化身と言われるアルフだ。

度々問題を起こしていたペアが居なくなったのなら、好都合だろう。
レイはレイブンクローの計算高い彼女のことを考えながら、思った。
この前の賭けが過程がどうであれ、ヨンリとアルフが近づくことはなくなった。

それは必然的にアルフの調子を狂わせ、ヨンリと共にいる俺も会うことはなくなる。
「ああ見えて、ヨンリはかなりの頑固者だ。それに、情報収集力は学校で最高クラスだ。」

話しているウェンディーの顔が悲痛に歪んだ。きっと、思い当たる節があるのだろう。
「あの悪魔野郎が単独でヨンリを上回るのは中々に難しいと思うがな。」

ｷｭ､ｷｭ､ｷｭ______
談話室にいた銀鼠が通り去るのを見ながら、レイは呟いた。