何気ない日常を… (ページ24)

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誤算【アルフ】ページ24

「おい！ヨンリ、てめえ待ちやがれ！！」

「わっわっっ！待たない待たない！meは待たない！！」

ドタドタとうるさい足音で逃げ回るヨンリに、それを猛突進で追いかけるアルフ。
二人の謎の奇行に周りの人が点になる中、二人は駆け抜けていく。
グリフィンドールの談話室の一歩手前まできたその時だった。

「往生際が悪いぞ！ヨンリ！！」

伸ばされていた腕を掴んだアルフ。
力強く引き寄せようとしたその手はするっと呆気なく手の内からすり抜けた。

そうたった一つの落し物を残して。

「あ、、」「え…」

アルフの黒手袋の中には、見覚えのありすぎるドラゴンの手袋。
対して情けなく目の前で揺れている色白の指先には、全く覚えがないアルフ。

手を取ろうとしたその瞬間、手袋だけが残って手がすり抜けた。
在り来たりなベタな展開にアルフが気がついたその瞬間、

すぱあんっ
と軽快な音ともに比喩でもなんでもなくてアルフの横っ面がすっ飛んだ。

「な、何すんだヨンリ！」
反動でばたりと床に倒れこんだアルフ。
俯きかけ、表情が伺えなかったアルフが顔を上げた時、その目元からはひとつの透明な雫が溢れて…

「ヨンリ…」

呆然としていて名前を呼ぶことしかできない情けない男を一瞥すらせず、屈みこんで掌中のそれを奪取したヨンリ。

再び腰を上げた時、溢れていたはずの涙が幻のように真顔になっている。
結局アルフには一言も、それどころかたった一度としてみることなく背を向けて談話室の向こう側に消えた。

そんな彼女を黙って見つめたままのアルフは、なんだなよ、と小さく悪態をつくことしかできなかった。

それからと言うもの、日常のように絡んできたアルフも、そのアルフを見かけるたびに犬のように飛びついていたヨンリも見かけなくなったレイ。
当然と言えば当然のように怪しんだ彼だが、アルフが絡んでいるともなれば自分から口出すことはない。
黙ったままのレイを傍らにヨンリは普段通りに過ごしていたが、一つだけ変わってしまう。

「おい、ヨンリ。」

「…」

見かけたり、声をかけられたその瞬間逃げ出すヨンリ。
そして普段は目に止めることもなかったドラゴンの革手袋に、自然と視線がつられるアルフ。

「くそっ、」

思い出すのは無表情の中にたった一度だけ垣間見得た彼女の涙。
どうすることもできない現状を前に、アルフはらしくもなく苛立っていた。

「どうしろって言うんだ…」

悪魔の小さな懇願はまだ天使には届かない。