何気ない日常を… (ページ13)

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食べ物【ヨンリ・ノヴァ】ページ13

「そう言えば、ヨンリ先輩は本当に何も食べたくないんですか？」

課題も終わり、談話室で編み物をしていたヨンリにノヴァが声をかけた。
きっかけは、机の上に置いてあった白湯だ。
「meだって、水なら飲めるよぉ。」
流石に死んじゃうからねぇ、なんてｶｶｶッ、と笑った彼女にノヴァは首を横に振った。

「いや、食事だってしないと死にますよ。……何かないんですか？好きな食べ物。」
急かすように隣に座られて、編み物の手を止めたヨンリは首をひねった。

「んー、……んー……喉につっかえらないもの？」
強いて言うなら、と言いたげに出した答えはあまりにも漠然としたものだった。
「いや、あの……具体的な食品名が知りたいです。」

思わずと言ったようにツッコミを入れたノヴァにヨンリは笑って頭を撫でた。
「何だい?好きな子でもできたか？meの意見は参考にならんから辞めとき。」

ほら、あそこにいるウェンディーやミラちゃん何かが女の子らしいよ。
指を指した先には、勉強をしている彼女達の姿が見えた。夜分遅くに熱心なことだ。

「別にそんなのではないですよっ！……もう、すぐにそうやって話をはぐらかすんですから。」
「ｶｶｶッ」

不満げに文句をたれたノヴァに勝ち誇ったかのようにヨンリがもう一度笑った。

「おーい、ヨンリ！ちょっと教えてよー。」
その時、勉強をしていたウェンディーがヨンリを呼んだ。
どうやら、魔法薬学でわからない所があるらしい。
「いーよー！お礼は……ノヴァ君に好きな食べ物を教えてあげることねー！」

「何それ。」
クスクスと笑ったウェンディーにヨンリは少し真面目な顔で言った。
「何かね、好きな子に料理をしたいんだって。」
「え、そうなのっ。素敵ねノヴァ君。私は応援するわ！」

グッ、と拳を握り締めてキラキラとした目で見られたノヴァはたじろいだ。
「違いますよ。」
「なんですって！」
すかさずノヴァがバラせば、怒ったように詰め寄った。ノヴァは困っている。

「……強いて言えば、レモンかなぁ。」
実を言うとこの白湯、ただの水を温めたものではない。
少しのレモン汁と蜂蜜が加えられていたりする。

ヨンリがホグワーツ魔法魔術学校に通い始めて初めて見つけた好きな食べ物だ。

「ま、食べるもんじゃないけどねぇ。」
ゴクリ、と飲み終わるとヨンリはウェンディー達の方に駆け寄った。

「さてさて、偉大なるヨンリ先輩に聞きたい魔法薬学は何かなー？」
グリフィンドールの寮は今日も騒がしい。