ゆ スパイとは女とは ページ40
[スパイ網を広げる為ではなく、嫉妬に駆られて惚れた男の妻を殺しにくるとは。]
[同じ女として恥ずかしいですね。]
思い出した瞬間、食べる気力が失せたのか二人の力が抜ける。
[あの女散々暴れるんですから。]
[確かにあの根性は凄いな。
後悪いな、毒の処理をさせて。]
[いいえ、こっちこそ証拠抑えを任せてしまって。]
芝 秋人のカバーをつけた小田切は、会場を抜けて、ボーイに扮した女スパイの証拠を抑えていた。
対するAは、一条 春華というカバーを利用し、夫人の傍に立ちずっと警戒していた。
夫人は"自分で"そばに置いているつもりだったろうが。
そして警戒線は最後の時に鳴った。
シャンパンを持って来たボーイを一眼で女だと見抜いたAは、小田切に寄り添うフリをして、一瞬にして自分と夫人のシャンパングラスを取り替え、事なきことを得た。
こうして波乱の三日間は静かな幕引きとなった。
女スパイは敵国だけでなく、ドイツとも面識があると言うのは本当らしく、D機関で上手く使うよう手配を整えた。
そして、Aはちゃっかり夫人からご祝儀代わりの宝石をもらったという。
小田切も証拠を抑え、Aの咄嗟の対応とは言え、パーティー会場での揉め事を起こさなかったことで、虚偽の申請をした鋼屋将校の手前を救ったという形に整えた。
こうすればあの魔王はこれを盾に、また上手く事を回すだろう。
しかし料理を前にしても精神的疲労のせいか、二人は食べる気がおきず、早々にレストランから離れた。
海辺に近い横浜で二人は沿岸に沿うようにのんびりと歩く。
昼夜眠らない事はよくあるが、必要以上に疲れを感じるのはあの女スパイの所為だろう。
身柄を拘束するまでじたばたと暴れ、そのあとは言い訳の嵐、しかもエンドレス。
別に言い訳なんか聞きたくないが、自決されては困るので日中仮眠を取って交互に女を監視。
この頭の弱さでよくも今まで生きてこられたものだと、二人して驚いた。
海辺から流れてくる潮風が、ふわっと二人の髪を撫でる。
Aの髪は優雅に風に弄ばれさらりと靡いた。
小田切は仕事終わりのこの空気に自然と癒されていた。
もしもAがあんな女スパイなら、そう思いかけて被りを振る。
「(あの女はただスパイゴッコに興じていただけだ…
本物の女スパイなら、)」
ぬばたまの髪がなびく様を見つめていると、ふいに振り返った美麗な横顔。
"どうしました?"
波の音に紛れて声は届かない、淡い唇が鮮やかに動く。
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アサノ(プロフ) - masyさん» 返事が遅れてすみません。そんな風に言ってた抱けるだけでとっても嬉しいです。masy様と趣味が合うなんてこちらこそ光栄です笑 (2017年12月27日 1時) (レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
masy - ハリーポッターのも読んでます!もうアサノさんの小説が好きすぎて……(笑)とても面白かったです! (2017年12月24日 20時) (レス) id: 065dd9adad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アサノ | 作成日時:2017年7月9日 14時