き 嘘に隠された事実 ページ39
【報告します。
全て無事終了、迎えをお願いします。】
相手が出ない電話に一方的に電話をかけたAは、言うべきことだけを言って、レストランの席に戻った。
向かいの席には小田切が朝食を食べている。
二人揃って不眠にもかかわらず一向に疲れた様子を見せずに、二人は男女の他愛ない話をした。
［思いの外呆気なかったな。］
コツコツ、靴音がモールス信号で届く。
それにピクッと反応したAも同じように靴音で返した。
［そうですね、でもミスを犯すところだったんですよ、私達。］
［そうだな、それには否定出来ない。
あの鋼屋将校の密約相手が、女だと気づかなければ、俺たちはいいようにされていたからな。］
フッと遠くを見る小田切。
その顔つきに気がつかないAは、地味な攻撃を続ける。
「危うく死人を出しそうになりましたからね。］
［…そうだな。］
そう今回の"尻拭い"には一つはっきりとしていない"モノ"があった。
それは事の発端、つまり上級将校である鋼屋将校が外人と交わしたという密約の内容。
それが何なのか、はっきりしなければ対象のスパイ像は見えてこない。
しかし肝心な部分が何故不明なのか。
もしもこの密約という内容が、証言者の鋼屋将校に"意図的"に隠されているとしたら？
そうAは推測し、見えないスパイの行動を分析した。
そうなると、このスパイの奇妙な矛盾に、気がつく。
密約相手の上級将校に顔を分からせない巧妙さと、交流が広い夫人に目をつけると言うずる賢さ。
対して、将校への脅しに安易に自分の知人を持ち出してくる馬鹿さと、次の行動が読まれた挙句、わざわざパーティー会場での接触を目論む素人っぽさ。
同一人物とは到底思えないこの矛盾、その答えは二つ、予想することができた。
一つはスパイが二人以上いる場合。
だが、スパイは基本単体で行動し、複数人の筈なら事前調査の小田切の警戒網に引っかかる。
なら、もう一つの答え。
それはどちらかの証言が嘘、もしくは誤認しているという可能性だ。
Aは後者に賭けた。
そもそも報告書の中でスパイの性別は判明していない。
密約相手には"外人"と称され、ドイツとの関係を仄めかす供述にも、友人が男なだけであって、誰も本人が男だとは言っていない。
そして、密約の内容の不明瞭さから察して、スパイが女だと考えれば説明がつく。
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アサノ(プロフ) - masyさん» 返事が遅れてすみません。そんな風に言ってた抱けるだけでとっても嬉しいです。masy様と趣味が合うなんてこちらこそ光栄です笑 (2017年12月27日 1時) (
レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
masy - ハリーポッターのも読んでます！もうアサノさんの小説が好きすぎて……(笑)とても面白かったです！ (2017年12月24日 20時) (レス) id: 065dd9adad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アサノ | 作成日時：2017年7月9日 14時
