さ 手探りの勝負 ページ38
そんな中お嬢の持っていたシャンパンが空になると、夫人が気を利かせて、自身のシャンパンを譲った。
「そんな、頂けません。
折角のお酒なのに…」
言い渋るお嬢に、いいからいいからと半分押し付けた夫人は、お嬢の耳元にそっと囁く。
「お願い、格好つけさせて頂戴。
若い二人の仲人になったみたいなの。」
ねっ、と半分おねだりのような気分で行って来る夫人に、それなら、と肩を竦ませたお嬢は夫人のおねだりに応じた。
一方、恋人が慣れない女性と連れ回されているのを、ヒヤヒヤとしながら見つめる若将官は、近くを通りかかったボーイに尋ねた。
「君、手洗いは何処にあるのか。」
「手洗いでしたらそこの扉を右手に曲がった突き当たりの奥です。
宜しければ御案内しましょうか?」
「いや、いい。それよりも、」
ちらりと心配そうに、未来の妻を見つめる若将官に、何か察したらしいボーイは、耳元でそっと囁く。
「あの奥様はやや御活発な面がありますが、若い女性にご無理は致しません。
宜しければ私が微力ですがお護り致します。」
「そうか、ではしばし妻を頼む。」
タタタッと走り去る若将官に、残されたボーイは笑っていた。
そう、まるで滑稽だと言わんばかりの冷たい笑みで。
ーーー
よもふけて、そろそろパーティーも終いといった雰囲気が流れる。
すると今まで誰も立っていなかった壇上に巨体を揺らした夫人が立つ。
「皆さん!
少々お耳を拝借!!」
わざと注意を引きつけるように大声を出した夫人は場内の目を集めた後、脇に佇む二人の男女を手招いた。
「晩餐会は御開きと致したいですが、ここで皆さんに祝ってもらいたい二人がいます。
この若い二人は近々に夫婦としてめでたく結ばれ、私達日本を背負う輝かしい将来を迎えます。
さあ、この二人のために祝いましょう!」
夫人の掛け声に合わせて、一斉にボーイやウエイトレスが紳士淑女にシャンパンを手渡す。
当然、壇上の二人にも新しいグラスが届く。
そんな二人を満足そうに見つめた夫人は、グラスを高々に上げ、音頭とる。
「日本の輝かしい未来と、若い二人の幸せな未来に!」
クイッとガラスを傾け、一気に飲み干していく夫人。
そんな様を嬉々として見守っている者がいる。
が、グラスが空になった途端、その顔は真っ青に変わった。
顔面蒼白の口だけが動く。
"信じられない"と。
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アサノ(プロフ) - masyさん» 返事が遅れてすみません。そんな風に言ってた抱けるだけでとっても嬉しいです。masy様と趣味が合うなんてこちらこそ光栄です笑 (2017年12月27日 1時) (レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
masy - ハリーポッターのも読んでます!もうアサノさんの小説が好きすぎて……(笑)とても面白かったです! (2017年12月24日 20時) (レス) id: 065dd9adad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アサノ | 作成日時:2017年7月9日 14時