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ま 猫とスパイと君と ページ31

「三好、貴方猫が気に入らないなら来なければいいでしょう。
それともこの暑さで苛立ってるんですの?」
「……」

再び普段の事務的なAの態度に、輪をかけて機嫌の悪くなった三好。
猫は自身の危機を察知したのか、ヒョイッとAの腕から逃げ出してしまった。



「あっ、…もう行っちゃた。」

残念、そう表情に出したAは立ったまま呆然としている七人を見つめ、一緒にどう?と声をかけた。

「涼しいんですか?そこ。」
「ええ、室内よりもね。
風通しが良くて、日中はずっと木蔭、水さえ巻けば心地いいのよ。
それにこの広さなら男八人も大丈夫。」

普段の堅苦しい敬語が抜け、屈託無く笑っているのは先程の猫のおかげだろう。
尋ねた実井も羨ましそうに見つめてから、三好とは反対側のAの隣に腰をかけた。

「へえ、これくらいなら丁度いいですね。」
「でしょう?」
「じゃあ俺には膝枕で〜」
「波多野、お願い。」
「おう。」

抜け目なくAの膝に飛びつこうとした神永を、華麗に一本背負いする波多野。
いつもの風景に和んだ他四人も、やれやれという顔で木陰に座り込む。

なるほど、直接陽の光が届く室内よりも余程快適だ。
Aにつられるわけではないが、全員が揃って野外に雑魚寝。
三好は崩れる髪型を気にしていたが、Aが差し出したハンカチで機嫌を直したらしい。

こんなこと一生に一度しかない、誰とは言わないが、自嘲的に微笑んで、襲ってくる睡魔に身を委ねた。


その日裏庭を通りかかった結城中佐は、この日ばかりは目を見開いた。

何故なら魔王の手先と謳われている彼らが、気持ちよさそうに木蔭で雑魚寝をしているからだ。


三好はハンカチを頭に敷き、ゆったりと仰向けに。
波多野は腕枕をして横向きに。
堂々と連中を跨いでAの膝に頭を乗せている神永。
実井はAの髪を弄んでいたのか、横向きにAの髪を掴んだまま寝入っている。
田崎は鳩を腹に乗せて仰向けに。
小田切は顔を見られないようにと腕を顔に押し付けて規則正しく眠っている。
福本は両腕を堂々と後ろに組んで仰向けに。
Aも寝ている時は警戒していないのか、無防備な格好ですっかり寝入っている。

「ふっ、」

そしてこの瞬間、魔王の笑みが見て取れたが、その事には誰も気がつかない。


夕方までD機関の惰眠は続いた。
そしてその日を境にそこは食堂の次に"癒しの"溜まり場になっていた。

け 腹の探り合い→←や 第六幕〈真夏のお昼寝〉



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アサノ(プロフ) - masyさん» 返事が遅れてすみません。そんな風に言ってた抱けるだけでとっても嬉しいです。masy様と趣味が合うなんてこちらこそ光栄です笑 (2017年12月27日 1時) (レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
masy - ハリーポッターのも読んでます!もうアサノさんの小説が好きすぎて……(笑)とても面白かったです! (2017年12月24日 20時) (レス) id: 065dd9adad (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アサノ | 作成日時:2017年7月9日 14時

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