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む 第五幕〈ハプニングの連続〉 ページ24

しとしと_____

雨の音が耳元でする

うっすらと目を開ければ、懐かしい人が見えた

逆光になって見えない表情、隠された何か
全てが水面に映る影のように脆く切ない



「所詮夢だわ、」

自分の声だけがやけに鮮明に届く

そういえばあの水面に浮かんだ、"あの人"は一体誰だっただろうか

自分はなんと呼んでいただろうか

うだる様な暑さの中、夢まどろむ


暑さが声を、喉を握り潰す

遠くかけ離れていくこの意識、
遠い遠い、ずうっと遠いその先に自分が過去に夢見た世界が横切った


が、所詮そんなものは紛い物



「二度と逢いたくない、
逢いたくないのよ、もう、二度と…」



つうっと涙が溢れ落ちた

掬われることにないその一粒に、自分の感情はどれほど詰まっていたのか

自問自答の嵐の中
疑いようのない現実が、つつつっと戻ってき始めた





「…これ本当強力だな。」
「ああ、」

全員の名前心の声をまとめたように甘利が呟き、田崎が肯定する。
八人の男に見つめられた状態で椅子に座り、朦朧としながら、意識のない自分と必死になって戦う彼女、
つまりAがいた。

自白剤を飲まされたAは糸の切れた人形のごとく手をだらりと下げ、普段の"読ませない"表情は一変。
ただの虚ろな表情に変わった、
そしてD機関の全員が初めて見る彼女がいた。


それは涙を流すAの姿だった。



時刻は数時間ほど前に遡る。
D機関は六月、自白剤への抵抗をつける為強化期間に入っていた。

外は変わらずの雨ばかり、どうせ暇だし外にも出たくない。
軽はずみに誰かが言い出し、ジョーカーゲームの罰ゲームで、負けたものから順に堕ちる、と言う地獄の耐久レースがスタートした。

初っ端に標的にされたのが、Aだった。
ちなみに言うと、彼女は雨だろうが晴れだろうが、雷だろうがなんだろうが、常に忙しい。

事情も知らないAは寸前に引っ張りだされ、そのまま会場の全員に裏切られてしまったらしい。
今日は特に忙しい、とぼやいていたAは、出された自白剤入りの茶を怪しみながらも飲み干した。

が、流石即効性の自白剤。
飲んだらすぐ仕事と、いきり立っていたAは急に腰が砕けたように揺らいだ。
危うく、後ろから倒れるところを神永に支えてもらうほど、効き目は強い。

「普段警戒している神永にも、無意識に背を預けるとは…」
「それ俺はどう言えばいいわけ?」

三好のもっともな発言に涙目の神永、仕方あるまい普段の行いだ。

う 無意識の中の意識→←ら 駆け引きの行末



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アサノ(プロフ) - masyさん» 返事が遅れてすみません。そんな風に言ってた抱けるだけでとっても嬉しいです。masy様と趣味が合うなんてこちらこそ光栄です笑 (2017年12月27日 1時) (レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
masy - ハリーポッターのも読んでます!もうアサノさんの小説が好きすぎて……(笑)とても面白かったです! (2017年12月24日 20時) (レス) id: 065dd9adad (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アサノ | 作成日時:2017年7月9日 14時

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