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う 無意識の中の意識 ページ25

一方Aは呆然と、言葉通りに人形のように力がなく、どう見ても普通ではない。

取り敢えず椅子に座らせたものの、やはり目は虚ろだ。

「じゃあ先ずは軽い尋問から。」

ニコニコといい笑顔の実井はぎしっと机の上に腰掛ける。
彼女を完全に見下ろす形になり、
実井が最初に尋ねたのは何ともデリケートな発言だった。



「貴女の"本当"の名前は?」

「…」

沈黙が続く、が、D機関の全員は一向に口を開かないAが、これまで何をしたのか、察した。

それは"全く覚えていない"という意識の刷り込み。

つまり本来の自分に繋がる情報を恐れて、"無意識"の刷り込みをさせた、と言うことだ。
この手の質問はダメか、早々に諦めた実井は、誰かどうぞ、と席を譲る。

「では僕が行かせてもらいましょうか。」
「三好、程々にしておけよ。」
「気をつけますよ。」

そう微笑んだ三好はAの耳元まで屈み込み、虚ろなその表情をまじまじと眺めた。

「(ほんとうに、優秀ですね。)」

クスリと笑い三好はそのまま耳元で囁く。

「それでは、
貴女が今まで"手を出した"男の人数は?」

おい、と全員が突っ込んだ。
プライバシー侵害もいいところだ、だが、Aは躊躇する事なく徐に口を動かした。

「…手"は"出してないわ。」
「では何故あれだけの貢物が?」
「…そんなの…ちょっとした言葉の使い方と軽いサービスだけでどうとでもなるもの。
一々身体を預けていたらきりが無い。」

ごもっとも、誰かが呟いた。

「じゃあ僕らの中で誰になら奢らせます?」
「…悪いけど化け物に興味はない。」

初めて視線をあげたAは、ぐるりと全員を見渡してから、何を今更と言いたげに被りを振っている。

「では恋愛観は?」
「何故…?」
「知りたいからですよ。」
「そう…」

と尋ねられた彼女は、考え始めた。
一瞬質問者に抗ったようにも見えたが気の所為らしい。

「…いない、」
「へえ僕らの中に貴女のお眼鏡に叶う人はいないと?」

残念、
おどけてみせた三好は早々に退散しようとした、が、ここで事態が急変した。




「だって、あの人はもう、」

そう呟いて、はらはらと涙を零したのだ。

それが今に至る。
ギョッとした顔の男達を置いていき、Aの涙は止まらない。
三好も何か物凄く不味いことをした、だが、察することはできても珍しく狼狽して動けない。

ボロボロと溢れた涙に耐えきれず、福本が涙を拭くと…

ゐ 錯乱した女スパイ→←む 第五幕〈ハプニングの連続〉



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アサノ(プロフ) - masyさん» 返事が遅れてすみません。そんな風に言ってた抱けるだけでとっても嬉しいです。masy様と趣味が合うなんてこちらこそ光栄です笑 (2017年12月27日 1時) (レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
masy - ハリーポッターのも読んでます!もうアサノさんの小説が好きすぎて……(笑)とても面白かったです! (2017年12月24日 20時) (レス) id: 065dd9adad (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アサノ | 作成日時:2017年7月9日 14時

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