つ 全ては結果で ページ20
一方結城中佐の部屋で報告をしていたAは、突然聞こえてきた大きな叫び声に、僅かに驚いた。
「…何をしてるのかしら。」
「よせ、どうせくだらんことだ。」
ちらりと若い女の横顔を結城中佐は見つめた後、小声でこう言った。
「資金を送るのは結構だ、しかし引き継ぎの田崎のことも考えろ。
手紙で泣いてきたぞ。」
ペラっと寄越されたのは、暗号化された手紙とAである曉燕がイェンとして稼いだ金の束。
成る程、スパイ網は問題なくても"イェン"と言う存在は大きかったようだ。
要するに、"後片付け"をさせてしまったらしい。
「…まあ、大変。」
「しかし、これくらい田崎ならこれくらいなんとでもする、お前が意識せねばならないのは立ち振る舞いだ。」
「すみません。」
「謝るな、貴様が自分で気がつかないまま、こうされるのは他の迷惑にもなる。」
地獄に引き込まれそうな低い声に、Aは身を小さくした。
くるっと椅子を反転させた結城中佐は、Aに背を向けている。
田崎に悪いことをした、そう内心で反省しているA。
すると不意に囁くような小さな声が聞こえてきた。
「引き継ぎご苦労、下がれ。」
「はい。」
一拍開けた優しい物言いに、Aは少しだけ心が和んだ。
だがその様子は微塵も出さずに言われ通り下がる。
五月の夕日が差し込む日、一つ歯車がカチリと動いた。
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アサノ(プロフ) - masyさん» 返事が遅れてすみません。そんな風に言ってた抱けるだけでとっても嬉しいです。masy様と趣味が合うなんてこちらこそ光栄です笑 (2017年12月27日 1時) (レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
masy - ハリーポッターのも読んでます!もうアサノさんの小説が好きすぎて……(笑)とても面白かったです! (2017年12月24日 20時) (レス) id: 065dd9adad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アサノ | 作成日時:2017年7月9日 14時