ね 第四幕〈ほんのりデート〉 ページ21
雨季なのか初夏なのか分からないほど、かんかん照りの今日。
この間の煩さが嘘のようにD機関の寝ぐらは静まり返っていた。
皆各々向かうべきところに向かったらしい。
ところがこの日までスパイとしての経験が浅いAは、まだ建物中で事務処理に追われていた。
「もしもーし」
「何ですか？今手が離せないんですけど。」
こんこんっという形ばかりのノック音が響く中、Aは後ろを向いたままだった。
はあ、とため息をついた甘利は、遠慮なく室内に踏み込む。
「なに」
「お、怒った顔も可愛いねえ。」
「…今すぐ僻地に飛ばしてあげましょうか。」
「おっとそれは勘弁。
いや、対した話でも無いんだけど、せめてこれくらいは受け取って。」
「…オパールのネックレス、三十はありそうね。」
三十、おそらくオパールの数のことだろう。
相手の所在や事情を聞かないところから、事情は彼女の方が詳しいらしい。
「…あのさ、毎度俺たちを脚に使って、貢物を持って来させるのはいいけど、程々にしといてやれよ。」
「あら事務処理全部押し付けておいてよく言えますねえ、甘利さん。
それに私は陸軍の方々にはただの女中で通っているんです。
"仕事"でそれ以上の経費が必要とあらば、"用意させる"のは自明の理だと思いません？」
「うん、君って清々しい程強かだよね。」
「お褒めに預かり光栄ですわ。」
作り笑いを浮かべて、戦利品を無造作に棚にしまい込む。
騙された男に落ち度はないとは言えないが、閉ざされる直前に見えた棚の奥には、他にも似たようなそれがあり、同性として多少の同情もしたくなる甘利。
「あのさ。」
「はいなんです？」
再び事務作業に明け暮れるAに向かって甘利は無粋な一言を。
「ちょっと外出ない？」
「お一人でどうぞ。」
女性においては百戦錬磨の甘利も、手酷くあしらわれて、流石に自信を無くしかけた頃その背後から、一言付け加えられた。
「…後五分待ってください。」
「では何があっても待ちましょう。」
恭しくお辞儀をするのだから甘利という男も食えない男だ。
別人なのではと言うほどの変わり身の早さに、Aが呆れた表情をするのも当然だった。
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アサノ(プロフ) - masyさん» 返事が遅れてすみません。そんな風に言ってた抱けるだけでとっても嬉しいです。masy様と趣味が合うなんてこちらこそ光栄です笑 (2017年12月27日 1時) (
レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
masy - ハリーポッターのも読んでます！もうアサノさんの小説が好きすぎて……(笑)とても面白かったです！ (2017年12月24日 20時) (レス) id: 065dd9adad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アサノ | 作成日時：2017年7月9日 14時
