か 第三幕〈任務帰りと疑念〉 ページ15
波多野とAが帰還したのは丁度夕方になる頃だった。
雨季を目前に控えた空模様はなんだか怪しい。
「…この様子だと明日には降るな。」
「そうなの?」
「ああ向こうじゃ不定期だったけど、こっちももうそろそろだな。」
「なら洗濯物には気をつけなれば。」
うん、と切実な顔するAはどうも捉える点が違う様な気がする。
波多野は突っ込もうとしたが、それもやめておいた。
おいおい自分がその洗濯物に巻き込まれるのは、容易に想像がついたから。
重たい荷物を担いでくる波多野を置いて、サクサクと歩いて行くA。
すると港降りてすぐ、誰かがそばを通り過ぎた時、さくっとポケットに何かをねじ込まれた。
「(これは…)」
背後の波多野に怪しまれない様に、ポケットを上から触る。
するとねじ込まれたのは何かの紙らしい。
「どうかしたか?」
「…いいえ、なんでもないです。
行きましょう。」
訝しげに覗き込んできた波多野を振り切って、指定の場所までくればわざわざ車での迎えだった。
「よっ、我らの姫君。」
バタンと内側から開けられた助手席に向こう側には、プレイボーイの称号で有名な神永が。
げっと嫌そうな顔をなんとか堪えて、波多野のためにドアを譲った後、自分も後部へと乗り込んだ。
「え、ちょっと待ってなんで後ろ?」
「いや、何かあっても大丈夫かと思って。」
意味深ににこりと作り笑うAに、神永の乾ききった笑い声が響く。
「Aあっさりフってくれちゃって、酷いな。」
「あら、なにか問題でも?」
「いいからさっさと行け。」
ムードもへったくれもないやりとりに、飽き飽きした波多野はどかっと座席の下から神永の足を蹴飛ばす。
はいはい、とため息をついた神永はゆっくりと車を進め、可もなくも負もなくゆったりとしたドライブで帰路につく。
道すがら、窓の外に目を写したAは先ほどまで自分がいた国を、なんとなく脳裏で思い浮かべ比べていた。
「(…何故かしら、こっちに帰って来て、こんなに落ち着くのは…)」
寧ろ向こうの方が敵も少なく、愛想の良い(そう振る舞っている)ものばかり。
なのにふと、帰ってきてどこか落ち着いている自分もいて、なんだか不思議な感触に囚われていたAは、いつの間にか意識を手放していた。
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アサノ(プロフ) - masyさん» 返事が遅れてすみません。そんな風に言ってた抱けるだけでとっても嬉しいです。masy様と趣味が合うなんてこちらこそ光栄です笑 (2017年12月27日 1時) (レス) id: 35d7b1e41a (このIDを非表示/違反報告)
masy - ハリーポッターのも読んでます!もうアサノさんの小説が好きすぎて……(笑)とても面白かったです! (2017年12月24日 20時) (レス) id: 065dd9adad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アサノ | 作成日時:2017年7月9日 14時