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藤川side



病室の前で深呼吸をし、笑顔を作る。そしてドアをノックし病室に入るとはるかはベッドの上で食事をしていた。


「あ、ちょうど昼メシか」

「うん。そっちは?まだ?」

「まだ。今日は外来が多くてさ。あー、いい匂い。腹減ったな」


今朝までトマトしかまともに食べれなかったはるかがちゃんと食事をしていることが嬉しかった。


「うまそうだな。ちょっとくれよ」


とベッドサイドに腰掛けながら言うと


「ダメ。これすごく美味しい」


とはるかはサバの味噌煮を食べている。


「うちの病院ってメシうまいのか。知らなかった。へえ、デザートまでつくのか」


とトレイを覗き込みながら言う。


「ね....美味しいよ...すごく美味しい」

「え...」


食べているはるかの目から涙がこぼれた。


「...ご飯が美味しい」

「ちょ...どうした」


はるかは目の周りを赤くしながら小さく首を振った。


「つわりで何食べてもまずかったのに。昨日まであんなに。

ああ、早く美味しくご飯食べたいなって、ずっと思ってたのに...

今日は全部....すごく美味しい」


はるかは皿のおかずを食べ終わり、


「....赤ちゃん、いなくなったんだね」


とつぶやいた。


俺は掛ける言葉が出てこなかった。


そんなときはるかの手から箸が落ちた。


堰を切ったように思いが溢れてきたのだろう。大粒の涙と一緒に


「ごめんなさい。もっと早くヘリを降りるべきだった。

あの日、白石先生の言う通りにすればよかった。私が悪かった。私のせいで赤ちゃんは死んだ」


「.......違う」


そう言ってもはるかは強く首を振り

「まだ13週なのに。たった13週であの子の命は終わっちゃった」


俺はまたしても掛ける言葉が出てこなかった。


「私はちゃんとお母さんじゃなかった」


と言い、両手で顔を覆った。


そんなはるかを見て俺は


「....はるか...」


とただ名前を呼ぶことしかできないのだった。

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うたプリ大好き?(プロフ) - 続き楽しみにしています! (2022年7月30日 12時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - manaさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて励みになります!テストが終わり次第また更新再開しますので、もう少しだけお待ち下さい! (2017年12月3日 14時) (レス) id: 773a14c9ee (このIDを非表示/違反報告)
mana(プロフ) - こんにちは!!! 素敵なお話ですー! 今後の展開が楽しみですヽ(´▽`)/) 期末…私もやばいな…(苦笑) (2017年11月28日 14時) (レス) id: 2e1de89dff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひかり | 作成日時:2017年11月22日 23時

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