空に光る星 2

ゴールドメダリスト ページ38

*



　悔しい…

　帰ったら4回転サルコウの練習しなきゃ…

　それから、余力を残してフリ―を滑り切るスタミナもつけなきゃな。

　課題は盛りだくさん。

　やる事いっぱいだ！


〈金メダルおめでとう！日本はスゴイことになってるよ。〉

〈スゴイこと？金メダルだったから？〉

〈うん！それと…女の子達が騒いでる…〉

〈どういうこと？〉

〈羽生君、アイドルみたいになっちゃってる…〉

〈アイドル？ボクが？まさかぁ〜〉

〈帰ってくれば分かるよ。〉


　ゆうべのAとのメールでのやりとり。

　ソチでの日本人金メダル第一号だから、きっと盛り上がってるんだろうな…

　それよりも、今からメダルの授与式だ。

　入場の時、右手と右足一緒に出たらどうしよう…？

　考えてたら、マジ、やっちゃいそうだ。

　考えないようにしなくちゃ。


　いよいよ始まる…

　メダル授与式が――――――


「ゴールドメダリスト―――」

　ボクの名前がコールされる。

　この時を待っていた。

　みんなの力に支えられ、つかみ取った金メダル。

　ありがとうの感謝の心で頭を下げ、ピョンと一番高いところに跳び乗った。

　会場に巻き起こる歓声に応え手を振る。

「ありがとうございます。」

　嬉しくて、そう言わずにいられなかった。

　金メダルがボクの首に掛けられた。

　一度はあきらめた金メダルが、今ボクの手の中にある。


　恩返し出来たかな…？

　今も復興途中の東北の人たちに。

　たくさんの声援に支えられてここまで来た。

　みんなの力があってこその金メダルなのだ。

　ありがとう。

　これからも、みんなの為に頑張っていきたい…

　流れる国歌を口ずさみながら、ボクはそう心に誓った。





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