空に光る星 2

ポロポロ ページ29

*



　エイ子達との2日間の卒業旅行は何のトラブルもなく良い思い出になろうとしていた。


　2日目、最終日の夜を羽生君の部屋で過ごす。

『時間よ止れ―――』

　心の中でどんなに唱えても、願いは叶うはずもなくサラサラと無情の時を刻んでいた。


「カナダに留学するんだ…」

　淋しそうに俯きながら羽生君は言った。

　今までは遠く離れていると言っても、新幹線で2時間ちょっと…

　逢おうと思えばすぐ行き来のできる距離。

　なのにカナダは遠すぎる。

　パスポートさえ持っていない私にとってカナダは未知の国。


　羽生君の重荷になりたくないんじゃなかったの？

　オリンピックを目指す、羽生君を応援し続けるって言ったよね？

　羽生君と約束したはずだよ？

　迎えに来てくれるまで待ってるって。

　その言葉を信じられないの？


　頭の中で声がする。

　胸の奥に隠していた不安を見抜かれたように問いただす。


　羽生君を信じて待てないの？

　信じてる…信じてる、信じてるよ。


　だったら、笑顔で送り出してあげなきゃ…

　不安な顔、見せちゃいけない。

　羽生君の夢は、私の夢でもあるのだから。


「私の事は心配しないで…羽生君の信じた道を突き進んでいって。私には応援することしか出来ないけど…」

　自分に言い聞かせるように言葉にする。

「ありがとう、A…これで心おきなくスケートに専念できる…」

　羽生君は静かにほほ笑んだ。




*

カナダへ→←その事を忘れないで…

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す