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番外編 第一訓 日常也 ページ45

「母さ……、主様、夕餉ができましたよ」

こと、とAは元、自分の部屋へと茶を運ぶ。

「これ、冷めるまでには来ないと無くなっちゃいますからね」

母は、審神者は、ふふ、と笑う。

「ありがとう。Aは先に広間へ行っていなさい。書類の整理だけしたらすぐ行くわ」

こく、と頷くとAは部屋を出、後ろ手にその襖を閉じる。
途端、月の光が目にしみた。

「神様も人間も、特に変わりはないんだなぁ」

己が手をぎゅ、と握りしめるも特に何の感慨もなくただ血の流れる音が掌に響く。

「Aよ、早く来い」

隣に大きな影ができたかと思えばそれは苦笑する。
岩融は前の事を気にしているのか随分と気にかけてくれ、優しく自分に声をかけてくる。

「うん、今いくよ」

その後に続くも、岩融は歩幅を合わせてくれているという事にまた、気づく。

「夕餉は何かなぁ」

こそっと呟くと岩融はん?と首だけを少しこちらへ向けた。

「昼間、燭台切がかれーるぅとやらを持っていたから、かれー、じゃないか」

「光忠のカレー、美味しいんだよね」

と、いい匂いが鼻をつく。

「ん、正解。美味しそうな匂い」

広間が近くなるとふんわりと腹の減る香りが漂う。
岩融はそこで振り向いた。

「さて、俺は主を迎えに戻るとしようか」

「え、なんでわざわざ私と」

「…本丸内とはいえ、夜は何処ぞの獣が飢えているかわからんからなぁ」

「獣?」

「ふふ、まぁいい。精々取られぬよう気をつけろよ、月は手の届くものじゃなあないんだから。横からその獣にかっさらわれんようにな」

誰に向けて行ったのか、岩融はそのまま踵を返す。
Aが不思議そうに唖然としていると、とん、と肩に何か触れられた。

「A」

「あ、三日月。どうしたの?」

振り向いたそこにはほのぼのとこちらに笑みを浮かべる三日月。

「どうにも忠告をされてしまったようだからな」

「…?」

何の、とAが言いかけると同時に本丸に響くのは光忠の声。

「夕餉の時間だよー!来ない子はいらないのかなー!?」

「大変。行こう、三日月!光忠のカレー美味しいんだ!」

「!、あなやー…」

ぐい、と三日月の手を引きAは駆け出す。
すれ違った一期に廊下は走るものじゃないですぞ、と怒鳴られながら。

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設定タグ:刀剣乱舞 , 白崎稜 , 三日月宗近   
作品ジャンル:泣ける話
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黎奈(プロフ) - はじめてコメントさせていただきます!!すごく面白かったです。完結お疲れ様でした!第四訓で宗三左文字が宗山左文字になっていらっしゃるのでご報告させていただきます。あと、ちょこちょこ報告に来るかもしれません… (2015年10月18日 22時) (レス) id: 339ceb4b4b (このIDを非表示/違反報告)
華維璃(プロフ) - お疲れ様でした!とても面白かったです!小説の書き方、参考にさせて頂きます<(_ _)> (2015年9月22日 20時) (レス) id: 5dbf713d35 (このIDを非表示/違反報告)
連合(プロフ) - お疲れ様でした! (2015年7月19日 17時) (レス) id: bbc5de6b90 (このIDを非表示/違反報告)
らい兎(プロフ) - 第三四訓の「突き出ているのは日本の大きな角。」というところもしかして日本→二本でしょうか?面白かったです。 (2015年7月13日 23時) (レス) id: 5d4b050560 (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - お疲れさまでした、面白かったです!宗近のじいちゃんが入手できないのが痛いですね。 (2015年7月10日 19時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2015年4月10日 14時

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