第二十訓 ページ20
「で？」
清光は今度、Aと三日月の間に入る。
「ふふ、そう怒るな。かわいい顔が台無しだぞ」
「あのねぇ…今そういうこと話してるんじゃなくてさ…」
「俺は！」
キリッと三日月は声を上げる。
刀剣たちは固唾を飲んだ。
「…俺は、主の名を知っている」
三日月の言葉に清光は驚いたように眉間にしわを寄せる。
「それについて、軽く主と談義をしていたらこの狐にソレを聞かれ、勝手に斬りかかってきただけのこと」
「おや、人聞きの悪いことを言うんですね？…私はあくまでも主を守ろうと剣をとったというだけのこと。…主に手を出そうとしていたのは明確ゆえ」
「手を出すなどと、恐れ多い…主様にそのような事はできまい」
三日月の言葉も、小狐丸の言葉も、どちらが正しいのかなど二人にしかわからない。
Aでさえ、三日月の真意はわからないままであったし、小狐丸の怒気の理由もわからないのだから。
「…どうしてじいさんは主の名をしってるの」
「それは、秘密だ」
Aは内心、ハラハラしながら清光の肩に手を置いた。
「もういいよ、清光。…小狐も、三日月も…みんなも。今日はもう寝よう」
刀剣たちは納得のいかない表情をしているものが多々だったが、それでも頷き、それぞれ部屋へと帰っていく。
「大将。一人で頑張りすぎだ。…何かあれば大声で呼んでくれ。すぐに駆けつける」
「ありがと、薬研。…どれだけ私が甘かったのか、よくわかった」
「別に責めてはないよ。主はそのままで、甘ったるいくらいでいいさ。
…その甘い蜜を狙う害虫は……いや、なんでもない。ま、なんかあったらよんでくれ」
「…ん。おやすみ」
最後に声を抱えていった薬研はくすっと笑みを零してAから離れていった。
庭に残ったのは、A一人。
寒空の下、ふと、空を見上げた。
「初めて何かを愛しいと思えた、か」
三日月の発した言葉をそのまま口にする。
「それは哀しい事だよ、三日月」
薬研は甘いままでいいと言った。
ならば、甘く、優しく。
「…愛されてあげるよ、それが歪んだ愛だとしても」
母様も、きっとそうだった。
それが自分に対しての愛故ならばと。
いつか危険に晒されるだろうと、わかっていても。
その刀を解刀する事なく、傍に置いていたのは。
それらを切り捨てる事のできない、甘さ故の。
「今ならわかるよ、母様」
親子だね、私たち。
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黎奈(プロフ) - はじめてコメントさせていただきます！！すごく面白かったです。完結お疲れ様でした！第四訓で宗三左文字が宗山左文字になっていらっしゃるのでご報告させていただきます。あと、ちょこちょこ報告に来るかもしれません… (2015年10月18日 22時) (
レス) id: 339ceb4b4b (このIDを非表示/違反報告)
華維璃(プロフ) - お疲れ様でした！とても面白かったです！小説の書き方、参考にさせて頂きます<(_ _)> (2015年9月22日 20時) (レス) id: 5dbf713d35 (このIDを非表示/違反報告)
連合(プロフ) - お疲れ様でした！ (2015年7月19日 17時) (レス) id: bbc5de6b90 (このIDを非表示/違反報告)
らい兎(プロフ) - 第三四訓の「突き出ているのは日本の大きな角。」というところもしかして日本→二本でしょうか？面白かったです。 (2015年7月13日 23時) (レス) id: 5d4b050560 (このIDを非表示/違反報告)
零玲飛(れいれと)(プロフ) - お疲れさまでした、面白かったです！宗近のじいちゃんが入手できないのが痛いですね。 (2015年7月10日 19時) (レス) id: 0bd3908221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：稜 | 作成日時：2015年4月10日 14時
