Melody for you【宮侑】

memory about you ページ8

リコーダー、そうだ。


そういえば席が隣になってすぐの頃、その話をした。





なんでその時思い出さんかったんやろか。




俺がリコーダー吹けなくて居残り練習をしたとき、いつも一緒に居てくれたのが橘さんや。









思い出してスッキリしたはいいが、治の声が大きかったから教室中の注目が俺と治と橘さんに集まっている。









橘さんを見ると露骨に面倒さそうな顔しとる。




『なんなん？さっきからジロジロ見てきたり、急に名前叫んだり』




｢いや、悪かったな、せやけど思い出してん！俺、やっぱりアンタと知り合いやったわ、橘さんも西小出身やろ？｣





『うん、小4くらいで東京に引っ越したけどな』




｢そっか、だから卒アルに居らんねんな。

あんな、俺やねん。リコーダー教わっとったん｣




『へえ、そーやったっけ……
あぁ…そう言われれば、そうやったかもしれんわ
あの双子、アンタらやったんか
懐かしいなぁ』






思ったより、反応うすい？

まぁ普通そうやんな、同じ小学校だったとか、地元民からしたらそこまで珍しい話でもないし








｢めっちゃスッキリした！
最初顔見たときからな、ずっと気になっとってん、どっかで見たことある顔やなーって。
思い出せて良かったわ！｣





俺はこの感動を分かち合いたくて銀島と角名を探しに行こうと教室を出ようとした。









そのとき







『…』





｢へ？今、なんか言った？｣




『ううん、何でもない』







いつもハキハキものを言う橘がこんなふうに言い淀むのは珍しかった。

何か言ってたとは思うけど、声が小さくてよう聞き取れんかった。









でも、何となく





___それだけ？__






って、そう聞こえた気がした。

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