六 ページ6
移ろう季節が、はらはらと落ちる木々の葉が、私を急かす。
昼も夜も、寝る間も食事も惜しんで機を織っても、貴君はみるみる痩せていく。
早く、早く……
私の羽も残り僅かとなり、人としての私の姿も揺らいでゆく。
貴君の具合もますます悪くなり、私をまともに見ることすらほとんどない。
人としての姿が薄れゆく今、それが貴君の目に触れぬことに少しだけ安堵をしながら、早く薬を買わなくてはと、私は焦る。
人の前に出れなくなる前にと、私は町に出た。
いつも私が織った反物を買って下っている反物屋を訪れる。
これまでに織ったものを差し出してお金に換えてから、頼んだ。
どうか、これからはこちらの家に来てはいただけないでしょうかと。
出来上がった物は、入り口すぐのところに、置いておきますから、と。
そうして家の場所を伝えた。
私の織った物を良いものとお褒め下さる反物屋の主は、快く承知してくださった。
そうして私は、私の身まで案じて下さる親切な主に、もう一つお願いをして、貴方の待つ家へと帰った。
ああ、もう指もまともに動かなくなりつつある。
急がなければ、ならないのに。
紅葉が散る前に、冬が来る前に。
でもこれさえできれば、お薬の代金に足りるはずなんだ。
あと少し、あと少し……
……結局、最後まで、貴君に真実を告げることはできなかったな。
怖かったんだ。
でも、これで終わり。
さあ、最後の、羽を……
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夢美 - 絵凄く上手でした。 (2019年8月1日 11時) (レス) id: 32185305c0 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち - 鶴の恩返しですか?面白かったです!!! (2018年11月27日 21時) (レス) id: afa6322ad5 (このIDを非表示/違反報告)
notリア充 - 絵が凄い上手ですね!お話しも凄く良かったです。黒彩良いですね最近は上彩ですがやっぱり黒彩も捨てがたいなあ (2018年11月24日 19時) (レス) id: fb8a1e68c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:琥珀 | 作成日時:2018年11月23日 18時