三 ページ3
日差しがみるみる強くなる。
じりじりと肌を焼かれるような暑さにも、日の光と影の明暗の強さにも、何やらくらくらしてくるようだ。
芽吹きの春に柔らかな瑞々しさを湛えていた草木も、濃く鮮やかな緑を湛えて、いっそ荒々しいまでに生命を主張する。
嗚呼、辺りはこんなにも生命に満ちているのに、暑くなってゆく中、貴君が咳き込むことが多くなった。
案ずる私に、貴君は「何でもない」と答える。
「風邪でも、引いたかな」
と、笑いながら。
けれどもそれは、本当に風邪?
どうしてこうまで、咳が長引くの?
段々と、食が細くなってない?
やつれていっては、ない?
思えども私には何もできず……いや、違う。
怖かった。
貴君に身に起こっている事が怖くて怖くて、何でもない、と言う貴方の言葉に縋ってしまった。
見て見ぬふりを、してしまった。
ああ、私は本当に、愚かだ。
そうすればきっとなんでもないことにできると、思い込んでいたんだ。
せめて早い内に、お医者様を連れてくれば……
暑い暑い夏の午後、鮮やかな青葉の落とす影の下、私は倒れ伏した貴君を見つけた。
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夢美 - 絵凄く上手でした。 (2019年8月1日 11時) (レス) id: 32185305c0 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち - 鶴の恩返しですか?面白かったです!!! (2018年11月27日 21時) (レス) id: afa6322ad5 (このIDを非表示/違反報告)
notリア充 - 絵が凄い上手ですね!お話しも凄く良かったです。黒彩良いですね最近は上彩ですがやっぱり黒彩も捨てがたいなあ (2018年11月24日 19時) (レス) id: fb8a1e68c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:琥珀 | 作成日時:2018年11月23日 18時