花笑み Ⅲ (ページ24)

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内容が理解できたかは別として、
資料に一通り目を通したあと、
俺はそれを阿部ちゃんの手元に戻しながら、
その姿を眺めた。

イタリアン料理、
動画の企画で一緒に行ったとき、
あまり正解できずにしゅんとしていた姿を思い出した。

全員で食事に行く機会は何度かあって、
その度に彼は、サラダを取り分けたり、
お店の予約をしてくれたり、鍋をよそってくれたり、

彼の努力で掴み取った賞金で、
豪華なお寿司を食べに行ったときですら、

自分でお店を予約して、
自分が一番気を回してくれていた。

焼き肉に行ったときは、一緒に肉を焼く係だったな。

みんなのお皿にお肉を配って、
たまに焼きすぎて文句を言われたりしながら、
それでも彼は笑いながら、楽しそうに焼いていて、

自分のお皿には、
焼きすぎて少し黒くなったお肉ばかりが乗っていた。

だから今日は、俺が思い切り甘やかそうと思う。

ケータリングのいい匂いが漂ってきて、
他のメンバーがそこに群がり始めたのを横目に、
俺はぐっと我慢する。

誰かと食事に行くときは、
お腹を空かせておくのが俺の流儀だ。

隣でラウールが嬉しそうにお弁当を見せつけてくる。
たまたまそれもイタリアンだった。

ru「一口くらい食べたら？」

…誘惑に負けて、
ソーセージを一口だけかじった。

阿部ちゃんはまだ眠っている。

佐久間くんがその向かい側に座って、
何度かつついていたけれど、目を覚ます様子はない。

見かねてパーカーを肩にかける。

その姿を、もう随分見慣れたような気がする。

しばらくして、
「え、もうそんな時間…？お腹すいた」
と、彼が不機嫌そうに言って、
しばらくしゅんとしていたのを、
俺は笑いをこらえながら見ていた。