花笑み Ⅲ (ページ18)

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ab「似合う？」

阿部のその言葉に顔を上げると、
俺のデザインした衣装を身体にあてがって、
にっこりと微笑んでいた。

「…似合うよ」

彼は満足げに頷いて、
「でしょ」と胸を張る動作をした。

ab「俺のことをよく知ってくれてないと、
　こんなに似合う衣装作れないよね！」

そうだ、初めて自分の衣装が出来たとき、
戸惑っていたメンバーもいる中、

真っ先に腕を通して、
心から嬉しそうに、楽しそうに俺を見て、
彼は目の前でくるりと回ってみせた。

ab「次の衣装も楽しみにしてる！」

阿部はそう言って衣装を戻すと、
眩しい笑顔を向けて、メイクルームに向かっていった。

ずっと心につかえていた後ろめたさが、
急に軽くなったような気がする。

うしろめたくなんかない、
重ねた時間の長さも関係ない。

それを含めて、俺と阿部の友情であり、
絆なんだと、本人に言われたような気がした。

阿部はどこまで分かっていて、
こうして声をかけてくれたのだろうか。

後悔があればあるほど、
きっと残されたほうが苦しくなる。

いつか照に偉そうにそう言っていたのに、
自分が一番その呪縛から逃れることが出来ずにいた。

彼はそれを分かっていたのだろうか。

ずっと立ち込めていた霧が晴れて、
心は一気に晴れ渡る。

頭の中には衣装のイメージが浮かんでいて、
俺は忘れないよう、
慌てて紙にそれを書き起こした。