【あんスタ】朔間兄弟の妹 (ページ8)

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今日も一日、プロデューサーらしいことも、アイドルらしいことも、何もなかった。
芸能界で最も歴史があるといっても過言ではない夢ノ咲学院のアイドルたちは、そのブランドの上に胡坐をかき、向上心なんて欠片もない者がほとんどだ。
授業中の態度も悪く、レッスンを真面目に受ける生徒をまだ見たことがない。
こんな学院に来てしまったのが運の尽き。そう思ってしまう。

近頃零お兄ちゃんを含む『五奇人』が学院の代表と囃し立てられている。
『一般生徒たち』は学院内外から注目されている彼らを羨み、そして妬み始めた。
その影響か『朔間零』と繋がりを持ちたい輩が私によく声を掛けてくるようになった。
楽をして上に立とうとする彼らにうんざりしている。

「私が憧れたアイドルって、こんなんだったっけ……」

今日も周りからの視線を感じる。勘違いかもしれないけど。
居心地が悪く、溜息を吐きながら俯く。

「え、なにこれ」

廊下の床や壁の至る所に、恐らく油性ペンで書かれたであろう音符が連なっている。

「楽譜……？」

それは廊下の奥の方まで続いていた。
誰がこんな悪戯をするのだろうか。
気になってその音を辿っていくと、歌が聞こえてきた。

レオ「♪～♪～♪」

無邪気に歌いながらペンを走らせる見覚えのある男の子。
彼の楽しそうな姿を見ていると、先程までの胸の靄が晴れていった。

しばらくして彼がこちらに気づいたようで、近づいてくる。

レオ「お前！また会ったな！」

「えっと」

レオ「お前、よく見るとすっごい綺麗な顔してるな！セナとは違う感じで良い！湧いてきた湧いてきた、霊感が……☆」

「いんすぴ、れーしょん……？」

彼は私の頭をぽんぽん撫でると、また音符を書き始めた。
本当に楽しそうだ。
言っていることもよく分からないし、やっていることも滅茶苦茶だけど、彼の歌を聞いているとこっちまで楽しくなってくる。

歌と踊りで人々の心を動かし、夢を与える――アイドルとは本来そういうものだと思う。
今目の前で無邪気に笑う彼は、紛れもない『アイドル』だ。
私は今日、名前も知らない彼のことを一人のファンとして、そして『プロデューサー』として応援すると心に決めた。