硝子玉に口付けⅡ (ページ3)

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｢──長!!団長!!起きてください!!団長!!｣
｢……んん、何事だ……モブリット?｣

何故ここに、と口を開く前に布団を叩いていたモブリットが口を開いた。

｢ほ、報告します!今、憲兵団ナイル･ドーク師団長が部下を数名引き連れて来ました!!｣

団長宛に、と差し出された封筒をひったくり、ペーパーナイフも使わず破り開け放り投げた。中身の紙には、
　
｢先日の街中での無断の立体機動装置の使用及び調査兵団が存在を隠蔽した沈黙者たちについての審議を行う……日時は……な、今日の夕方!?｣

今にも泣きそうな顔をしたモブリットが敬礼した右の拳を震わせた。

｢恐らくもう既にAのいる地下に向かっています。今、ハンジ分隊長が兵長たちを起こしに｣
｢……分かった。君はハンジたちのところに向かってくれ｣

部屋を出ていくモブリットを横目に、適当なシャツとスラックスを手に取る。洗顔や髭剃り、髪を整える余裕はなく、乱れたベッドもそのままに部屋を飛び出した。
起床の時間よりまだ早いこの時刻。が、数人の兵士は既に起きていて廊下を駆ける目も当てられないような姿に驚愕の視線が突き刺さるが構っている場合ではない。急がなくては、我々の希望が、鍵が、糧が、奪われてしまう。

｢ナイル!!｣

見慣れた後ろ姿に怒鳴り付けた。その影は、ゆっくりとこちらを振り向いた。

｢エルヴィン……｣

彼はエルヴィンの姿を見て目を細めると、わざとらしく鼻を鳴らした。

｢何故お前がここに｣
｢ふん、今回我々憲兵団は王政の代理として審議に参加する。私がその、責任者だ｣
｢なっ!?｣

驚愕するエルヴィンを他所に、呆れた様子のナイルは牢の中のベッドで呆けているAを一瞥した。彼女は状況が理解できていないのだろう。右に傾けられた首と半開きの口が物語っていた。大方、寝ていたところを突然起こされたのか。

｢またお前は録でないことを。リヴァイの件しかり、お前の脳味噌は理解できんな。どうせ大した結果も残さず｣
｢俺がどうした、ナイル｣

エルヴィンの背後から唸るような声がした。ナイルはそれを認めると途端に顔を歪める。

｢リ、リヴァイ……｣
｢ふん、てめえら憲兵団も偉くなったもんだな。飲んだくれているだけで出世とは」
｢リヴァイ｣

口元を僅かに歪めて皮肉るリヴァイを制する。今は、駄目だ。完全にこちら側は不利だった。
そのまま無言で睨み合いを続ける二人。不穏な空気に息が詰まりそうだ。
と、

｢あの、｣

空気を読まない奴が一人。