プロローグ ページ2
◇
☆その名、雫谷 A☆
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
『ッ…………』
＿＿＿＿幼い少女が独り、故郷でもなんでもないネアポリスの路地裏で、写真を持ちながらシクシクとないていた。
＿＿＿＿＿＿＿＿あの美しい太陽とは正反対のように。
「嬢ちゃん。しょうがないんだ。親御さん死んじまったんだろ？？オレらが預かることになっちまったんだよ」
少女は反応せず、ただただ下を見て灰色の道路を眺めているだけだった。
雨にもかかわらず、太陽のような少女はシクシクとずっと泣いている。
それを見た男が、もう一人の男に喋りかけた。
「子供の名前は雫谷 A6歳。日本の杜王町出身らしいです」
「そうか、ジャポネーゼか」
男は立ち上がり、少女の頭をなでた。
それは、少女の気持ちをなぐさめるかのように、だ。
少女はそれでもなお泣いている。しかし男は奇妙なことに気がついた。それは、少女の持っている写真だ。泣いているくせに写真だけは大事に持って、抱えながら泣いている。
"普通、人は泣いている時泣くのに集中するのに"
「その写真、見せてくれねぇか？」
『ッ、やだぁ……………』
ばっと背後にかくす。男がその瞬間を見たとき、写真はボロボロであり、美しい女性と幼い少女が写っていたという。
ますます興味になる。
「壊さないから。見せてはくれないか？」
『………………』
少女は背後に隠していた写真を、男に見せる。男は少女の手を取るとき、少女の手はキズだらけでところどころ血がにじんでいたそうな。それはほっといて写真を見る。
「………美人さんが二人もいんのかい。誰だい？君ともう一人は」
『…………………お母さん』
「お母さん、か……………」
見た目だけで10代前半？それくらい若く、とても美しかった。しかし写真に写る少女は太陽のように笑っているが、母親と言われるそのイメージは、まるで月のようだった、笑ってはいなかった。
男は写真を少女にかえす。
そして、こう言った。
「A。お前はこれから、ギャングだ」
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