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どうしようもなく自分が嫌で、知らない町をよく歩いた。自分を知らない人たちのいるところに溶け込みたかった。
電車で適当に降りた駅周辺でぶらぶらしていたら、1人の女子に目が止まった。
晴れてるのに、ずぶ濡れ。
同情よりも、自分みたいだと思った。
きっと、俺とおんなじ。
必要とされる時は見下す対象になる時だけ。
何だか放っておけなかった。
それは優しさからじゃなくて、重ねた自分が惨めに感じて、せめて何とかしたかった。
泊まる用に持っていた服とタオルを与えた。
昔の俺もあんな風に見られてたから。
"『ありがとうございます。…絶対お礼します、』"
"TH「いーよ別に。」"
"『な、名前教えてください。』"
"TH「……さぁね。名前なんかないし、」"
テヒョンと呼ばれる度に思い出す。
怒鳴り声と涙声で俺を呼ぶあの人を。
要らない、と呪いを込めて呼ばれてるみたいで好きになれなかった。
"『ありがとうございますっ、』"
そんな泣きそうにならなくていいのに。
潤んだ瞳は、彼女を思い出させるところがある。
そういえば、あの時のあの子の香りが、
きみによく似ていたんだ。
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作者名:鯢 | 作者ホームページ:https://twitter.com/3_sho_u0
作成日時:2021年11月1日 14時