167. 暗闇の中のぬくもり ページ33
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「で、どれ観んだよ?」
『…これ』
「湯を沸かせないほどの冷めた愛?…つまんなそうだな」
チケット売り場で目的の映画を指差した私に、文句を言いはじめた神楽木。
『じゃあ、観なくていいです』
「はぁ? なんでお前に決められなきゃいけねえんだよ」
『だって、つまんなさそうなんでしょ? お金もったいないんじゃない?』
「お、俺はそんなケチじゃねえっ!」
『はいはい…』
「A、席どこにする?」
『ぁ、じゃあ……ここは?』
「うん、じゃあそこにしよっか。ポップコーンも買ってく?」
また言い合いになりそうになったとき、隣にいた天馬くんがお財布をだした。
『うん。ぁ、自分の分は払うよ?』
「いいよ。今日誘ったのは僕だし、Aと制服デートした記念にってことで」
『ふふ、たしかに記念だね。ありがとう、天馬くん』
「賢人くん、じゃあ私たちはその隣にしよっか!」
「おう。お前の分も俺が買ってやるからポップコーンでも何でも好きなもん買えよ」
「えっ、いいの!?」
…でたよ、負けず嫌い。
そんなライバル意識に呆れながらも劇場へと向かう。すると、神楽木は指定されていない席に座った。
『いや、席そこじゃないから…』
「あ?」
『チケット買ったとき座席指定されたでしょ?』
「席決まってんのかよ」
はぁ…、ほんと人の話聞いてないんだから。
もういちど呆れながら座席に着くと、私の右に天馬くん、左に神楽木、その隣にメグリンが座った。
「やっぱり賢人くんの席こっち!」
「いや、席決まってんだろ? めんどくせえよ…。いいだろ、どっちがどっちでも」
私と隣だったのが気になったのか、メグリンが席を立つ。
そんなメグリンの気持ちに気づかない神楽木は動かない。
結局そのまま、劇場の明かりは落ちていった。
久しぶりのこの独特な空気にワクワクしながらスクリーンを観ていると、ふと右手に温もりを感じた。
『……?』
“ シーッ ”
隣を向けば、人差し指を唇にあててイタズラっぽく天馬くんが笑っている。
…暗くてよかった。
だっていま、きっと顔が赤い。
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I(プロフ) - ねここさん» ねここさーん!またお話できて嬉しいですっっ。毎日来てくださりありがとうございます☆ …私と好みの相性がバッチリですね(笑)これからも、ねここさんが楽しんでもらえるよう書いていきます!またお話しましょう♪ (2018年6月17日 2時) (レス) id: 020c5bbf85 (このIDを非表示/違反報告)
ねここ - 神楽木と花沢類がだいっすきなので最高です><ほんとこの小説大好きです!(*^^*) (2018年6月16日 22時) (レス) id: a4296a5a43 (このIDを非表示/違反報告)
ねここ - やばーい!はやく続きが読みたいです\(^o^)/前にはじめまして!でコメントさせていただいたものです!(笑)毎日みにきてます!(笑) (2018年6月16日 22時) (レス) id: a4296a5a43 (このIDを非表示/違反報告)
I(プロフ) - おもちさん» おもちさん、読んでくださりありがとうございます!!毎日楽しみに待ってくださるだけでも嬉しいのに、こうしてお話できるなんてとっても幸せです(*^o^*) 読みやすいように構成には一番気を遣っているので褒めてもらえて、すごくパワーもらえました!頑張ります! (2018年6月13日 23時) (レス) id: 020c5bbf85 (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - お話の構成が上手で読んでいてとても面白いです。毎日密かに更新を楽しみにしています(笑) (2018年6月13日 20時) (レス) id: 20265c6f3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:I | 作成日時:2018年6月8日 22時