78. 戻れないあの頃 ページ34
.
『愛莉ちゃんっ、開けてっ！？』
「もう賢人の彼女気取りっ？」
扉越しに聞こえてくる愛莉ちゃんその声に、扉を叩いていた手が止まる。
「あんたなんかと友達になるわけないじゃない……」
『え…、』
「婚約者に貢いでもらっておきながら、貧乏人のくせに賢人にもちょっかい出す女なんかとねぇっ！」
…なんで？
愛莉ちゃん、私と友達になりたいって……
ぜんぶ、嘘だったの…？
『…誰かっ、誰か助けてっ！！！』
去っていく愛莉ちゃんの足音に、必死で扉を叩く。
だめだ…、スマホも圏外で誰にも繋がらない。
それに、ここ……すごく寒い。
もしかして、冷蔵室に閉じ込められた…？
何かここから出る手段はないかと、スマホのライトを頼りに薄暗い室内を歩き始める。
すると――
ここにいるはずのない人が、うずくまり、寒さに震えていた。
『……天馬くん、？』
「A…、……よかった、無事で」
『どういう、こと…？』
「さっき、Aの友達って人から連絡があって……Aが倒れたって、ここの住所が送られてきて」
そうして愛莉ちゃんに呼び出された天馬くんは、突然ここに閉じ込められてしまった。
なんで、天馬くんまで…。
『ごめん、また私のせいで…』
隣に座り謝ると、天馬くんは自分のジャケットを脱ぎ、私の肩にかけてくれた。
『え、だめだよっ…天馬くんずっとここにいたんでしょ？体だって冷えきっ…』
“ ぎゅ…”
「……こうやって、Aにくっついてたらあったかい」
後ろから感じる天馬くんの心臓の音に、耳のすぐそばで聞こえる天馬くんの吐息に。
一瞬で、呼吸がしづらくなる。
「なつかしいなぁ…、この感じ」
『え…？』
「子どもの頃、軽井沢の別荘に行ったとき…森で迷子になったことがあっただろ？」
『…うん』
「Aが怪我した鳥、見つけて助けようとしてさ」
あの頃がなつかしい。
だけどもう……、戻れない。
「あのときも、こうやって二人で寄り添ってたよね」
純粋に天馬くんのことを想っていられた、あの頃には…
もう、二度と…
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 626人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
I(プロフ) - 美紀さん» 美紀さん、ありがとうございます！！！…そんなそんなっ、読んでくださるだけでも有難いのにタメ語でお話するなんて恐れ多いです〜…((+_+)) (2018年5月31日 1時) (
レス) id: 408ad8cdff (このIDを非表示/違反報告)
美紀 - 移行おめでと(^^♪作者さんタメでいいよ (2018年5月30日 19時) (レス) id: 39e38305d9 (このIDを非表示/違反報告)
I(プロフ) - 由良さん» 由良さん、お読みいただきありがとうございます！！たったいま更新したので、ぜひお楽しみください(*^-^*) (2018年5月29日 21時) (レス) id: 408ad8cdff (このIDを非表示/違反報告)
由良 - 更新楽しみにしてまーす！ (2018年5月29日 16時) (レス) id: 3c3c648279 (このIDを非表示/違反報告)
I(プロフ) - 蓮さん» いえいえっ、蓮さんの後押しがなければ書くことができなかった作品なので、蓮さんに読んでもらえて本当にうれしいですっ！！ たったいま更新したので、ニヤニヤしながら(できるかしら笑)お読みくださいっ☆ (2018年5月26日 17時) (レス) id: 020c5bbf85 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：I
| 作成日時：2018年5月22日 18時
