ーEpisodeー ページ3
*
気が付けば、夕陽がかなり傾いてきた。
雨も上がったのか、虹が見える。
洋服はずぶ濡れ。
親に怒られるのは確定だろう。
勿論、傘を忘れたことも。
＿傘、意味なかったわ。ごめん。＿
心の中で、由実に謝っておく。
そろそろ帰らないと、更に怒られそうだ。
「それじゃあまたね、雪。」
最後に一撫ですると、猫は更に目を細めた。
この短時間で“雪”と名付けられたその猫は、
少し寂しそうな顔をしたように見えた。
「はぁ……なんでそんなにずぶ濡れなの？」
「猫を見つけて、」
「なんで猫と遊んで帰ったの！？ 心配したじゃないの！ それに傘も忘れて。」
上手い言い訳を思いつかず、
正直に話したところ、やはり怒られてしまった。
「風邪ひかないように、お風呂にゆっくり入りなさいよ。髪もしっかり乾かしなさい。」
説教は終わり、呆れたような声で言われた。
こうなった以上、逆らう事も出来ない。
仕方なく、遙はお風呂に入ったのだった。
「上がったよ〜。」
一応リビングに声を掛け、遙の部屋に向かった。
髪は乾かした？ という母の声は無視をして。
バタンとドアを閉め、ベッドに飛び込む。
ふかふかとした布団は、暖かく
太陽の香りがする。
＿そういえば、この匂いって、＿
以前、テレビで見たことを思い出す。
思い出さなかった方が良かったのかもしれない。
＿ダニの死骸の匂い……うげ。＿
思い出さなかった方がいいと、今更後悔をする遙。
ベッドから逃げるように立ち勉強机に向かう。
部活で勉強をサボり、多くの宿題に追われている遙は
毎日仕方なく勉強しているのだ。
＿明日、風邪ひかなきゃいいけど。＿
完全に自業自得の理由だが、
その事については最早考えていない遙。
勉強を終え、ベッドに再び飛び込むと、
睡魔が襲ってきてそのまま、眠りについてしまった。
翌朝。
小鳥の鳴き声で目覚めた遙は、
机の上に乗った体温計に手を伸ばした。
ﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ
液晶を確認すると、36.2℃。
安堵の溜息を漏らし、体を起こす。
今日も学校だ。少し憂鬱に感じるが、
テニスのためだと思い、学校の用意をする。
朝ごはんを食べ、支度を終えた遙は、
最後に鏡で全身をチェックする。
「いってきます。」
今日も、重い鞄を背負って家を出たのであった。
空を見ると、綺麗な晴天。
少し、足取りが軽くなった。
*
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