ーEpisodeー ページ2
*
1人の少女は、窓の外を見ていた。
決して、サッカー部のエースがいるだとか、
綺麗な雲が広がっているだとか、
そんなことでは無い。
サッカー部なんて、外に出られないくらい。
綺麗な雲なんて、見当たらないくらい。
外は、雨が降っていた。
「はぁ……」
1人の少女_
何度目かも分からない溜息をついた。
「どうしたの、遙? ……って言っても、理由はわかるけどさ。」
時は流れて、休み時間。
遙の親友_
そう、遙が溜息を吐く理由。
それは、雨が降っていることである。
「テニス出来ないじゃん……」
テニス部に入っている遙。
毎日練習を積み重ねており、
遂にキャプテンを任されるまでとなった。
しかし、雨が降る日は練習が出来ない。
それが溜息の理由であった。
そして、もう一つの理由、それは_
「いたっ……」
「大丈夫? 痛み止め飲んだ?」
偏頭痛持ちであるという事。
親からの遺伝である為、
痛みが出る度に両親_それと、雨_を恨んでいる。
「傘、忘れた……」
「はぁ!? 折り畳み傘は?」
「壊れて捨てたの。」
今度は、由実が溜息をつく番である。
深く溜息を吐いた由実は、呆れるように言った。
「今日だけは貸してあげるよ。」
「えっ、いいの?」
「じゃなきゃ泣くでしょ。」
「あ、ありがとう……」
*
放課後。
由実から借りた傘を片手に、
遙はとぼとぼと通学路を歩いていた。
「近道、通ろうかな。」
雨宿りをする時に通る、秘密の近道。
かなり細く、暗い為あまり通っていないのだが、
こういう時は別だ。
「はぁ……頭痛いわ。」
ズキズキと痛む頭を抑え、1人歩く。
此処から右に曲がれば裏道だ。
数えていたとしたら、百を超えているだろうか。
溜息を吐きながら、路地裏に入ると__
「ね……こ……?」
少し泥で汚れた、可愛らしい猫がいた。
由実から借りた傘を横に置き、
猫の前に屈み込んだ。
この際傘などどうでも良い。
手を伸ばすと、猫は顎を乗せて目を細めた。
「わぁ、可愛い……」
遙は、猫が嫌いという訳ではない。
むしろ、好きに分類されるであろう。
白猫。一番好きな猫の毛色だ。
少し汚れているが、可愛いからどうでもいい。
暫くの間、遙は猫を撫でていたのだった。
*
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