3.“物騒な”世界 ページ3
「本当に、申し訳ないんですが、その…、記憶が、なくて」
こんなことをあっさりと信じてくれるイケメンがいるだろうか。いや、いる。
流れ…的な何で磯貝悠馬くんがおうちまで送ってくれることに。
「磯貝悠馬くん、イケメンだね、妹の言った通りだ」
とんでもないことを口走った気がする。案の定、磯貝悠馬くんの目はまん丸。
「何言ってるんだよお前。お前の家に妹はいないだろ」
磯貝悠馬くんは、歩きながら「私」について色々なことを教えてくれた。
家族構成は両親、祖母、兄の四人家族だということ。「私」は椚ヶ丘中学校という学校の生徒で、クラスはE組だということ。話しているうちに家に着いたらしく、磯貝悠馬くんはインターホンを押している。
「磯貝です。潟上Aさんを偶然道で見つけたので送りにきました」
ありがとうね、という優しい女の人の声と同時に扉が開いた。きっと、「私」のお母さんだろう。
「ただい、ま。お母、さん?」
磯貝悠馬くんは事情を話してくれたみたいで、お母さん(仮)は泣きそうな顔で私を抱きしめた。初対面のはずなのに、どこか懐かしい匂いがした。そこで確信した。この人は「私」のお母さんだ。
お兄ちゃんらしき人とおばあちゃんらしき人も玄関にきた。
家族なのに覚えていない申し訳なさと、でもどこか懐かしい匂いに、視界が歪んだ。
「ごめ、なさい。覚えてなくて。、で、ありがと、おか、さ、おにいちゃ、おばあ、」
言い切れていないのに、嗚咽が止まらなくて言えなかった。初めてあった大好きな人たちに、記憶が飛んだ謝罪と、暖かく迎え入れてくれたことに対する感謝を。
最後に磯貝悠馬くんは、「明日学校まで連れて行くから」と言って帰っていった。
私は母の腕の中で考える。
暗殺教室、なんて物騒なタイトルの漫画にトリップしてしまったのだろう。
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作者名:はまち | 作成日時:2019年7月13日 11時