2.「こちら側」と「向こう側」 ページ2
お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
頭上から聞こえる男の人の声。お嬢ちゃんさん、何があったんだ。
「おい、お嬢ちゃん⁈大丈夫か⁈」
あ、お嬢ちゃんって私か。そこで私はようやく身を起こす。ずっと声をかけていてくれたらしいお兄さんが、助けてくれた。
「お嬢ちゃん、自分の名前言えるかい?」
「…潟上、A。」
「その制服、椚ヶ丘だね、家わかる?」
この人は、マンホールから助けてくれた優しいお兄さんに過ぎないので、信用はできない。
私はこくりと頷き、その場を立ち去ろうとした。
…まてよ、私はこんな街並み知らないぞ。
あ、もしかしたら、参考書を読んで前を見ていなかったから、道を間違えたんだ。
私は迷子になった時の心得なんて知らない。とりあえず歩こう。
い、いやぁ…下手に動かなければよかった。どうしよ…
「潟上ぃー!」あっ、はい私です。ていうか誰だいアホ毛少年。見覚えがないわけではないが…
「お前、こんなところで何してんだよ。お前の家もっと向こうだろ」
「すみません、どちら様ですか」
初対面だから当たり前のことを聞いただけなのに、このアホ毛少年ときたら目を丸くした。
「お前…大丈夫?磯貝悠馬!」
イソガイ…ユウマ…。ああっ、妹の推しキャラだっっ!磯貝悠馬くん、確か暗殺教室?のキャラ。私は全く知らないけど、なんかいい作品らしい。
今の磯貝くんの言動からの私の仮説はこうだ。
私はマンホールに落ちた際になんらかの衝撃で『暗殺教室』の世界にトリップとやらをしてしまった。しかしこの世界にはすでに「私」が存在している。
となると。私は「こちらの私」に憑依して、「こちらの私」は「向こうの私」に憑依した…。
それって結構大変なことじゃないか⁈
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作者名:はまち | 作成日時:2019年7月13日 11時