#7 過去編3 ページ10
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「ごめんねA…私のせいで、沢山、我慢させちゃったね」
病院のベッドの上、最期を迎えようとする母の隣りで私は母の手を握りながらぶんぶんと首を横に振る。
がんのステージはとうとう4に到達し、母は余命宣告をされ治療は終末期医療へと切り替えられた。
これは、病気を治すための治療ではなく、余命わずかな患者が病気による苦痛に苦しまないように、穏やかに最期の時を迎えるための治療だった。
私は、一ミリでも可能性があるのなら「治すための治療」をしてほしかった
けれど、この終末期医療は母が切望して処置されたものだった。
「よく聞いて…私が死んだら、葬式をしても少しは余るくらいの保険金が下りるから…そのお金で、あなたはあなたの好きなことをやりなさい」
母の顔は、病気のせいでやつれ、昔よりもシワが目立つ
「あなたの大事な時間を私の病気のせいで奪ってしまったことが憎い」
けれどその優しい眼差しと、温かな母の手は昔と少しも変わらない。
「これから先、あなたがどんな人生を歩んでも、あなたの幸せだけを願っているから」
「…やだ、やだよ、おかあさん……っ」
私は子供みたいに泣きじゃくり、母の手をさらに強くぎゅうと握る
けれど
「A、幸せになってね」
そう言い残して、母は永遠の眠りについてしまった。
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アリス(プロフ) - なちこさん» はい!こちらこそよろしくお願いします!(?) (2021年3月31日 2時) (レス) id: 5459160ee1 (このIDを非表示/違反報告)
なちこ(プロフ) - アリスさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるの本当に嬉しいです…!これからもぜひよろしくお願いしますっ! (2021年3月30日 23時) (レス) id: b338af306c (このIDを非表示/違反報告)
アリス(プロフ) - 面白かったです!!!応援してます!!! (2021年3月28日 23時) (レス) id: 5459160ee1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なちこ | 作成日時:2021年3月13日 16時