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ーーーside K
突如招かれることになったAさんの家。
全員テーブルにつき、それぞれの目の前に出来立てのカレーが置かれる。
俺のところに回ってきたカレー皿には、A
さんが言った通り俺の嫌いな野菜は一つも入っておらず、その分肉がゴロゴロと入っていた。
なんだか特別扱いをしてもらえたようで、年甲斐も無く嬉しくなってしまう。
「やっぱ普通のカレーがなんだかんだ一番美味しいよなあ〜」
「家庭の味ってやつ?」
「わかる〜」
他の3人も美味しそうにそのカレーを頬張っていた。
ふと目の前のAさんの顔を見ると、嬉しそうにニコニコ笑っていて、目が合うとさらにその目を細くして綺麗な笑顔を見せた。
「おかわりもあるんで、たくさん食べてくださいね」
その笑顔に、ドキリとした。
俺が言葉に詰まっていると、こーすけが会話を繋げる。
「なんか、タダ飯食いにきたみたいですいません」
「いえいえ!こっちに引っ越してきてからこんなふうに大人数でにぎやかにご飯食べることもなかったので楽しいです」
彼女のその言葉に、すっかり気を許した3人は「じゃあお言葉に甘えて俺おかわり〜」「あ、俺も俺も」「俺も〜〜」とぞろぞろと席を立ってキッチンへと向かっていく。
「キヨさんも、遠慮せずいっぱい食べてくださいね」
「……ありがとうございます。俺も、おかわり」
なんだか心臓がドキドキして、彼女の顔を直視できなかった。彼女の笑顔が眩しくて、笑いかける声が心地よくて、冷静でいられないような気になった。
そんな自分を誤魔化したくて、他の3人に続いてキッチンへと向かう。
どうしちまったんだ、俺。
けれど、この感情のことを世間一般的になんと呼ぶのか
それがわかるまでに、そう時間はかからなかったのだ。
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作者名:なちこ | 作成日時:2021年3月2日 4時