永遠に幸あれ【梅原裕一郎】

一番になったら（リク） ページ40

．
．

「ぱぱ、娘がんばるからみててね」
「うん。ずっと娘のこと見てるよ。じゃあ行ってくる」
『よろしくねー』

今日は幼稚園の運動会。娘にとって最初だから絶対に可愛いところを残すと決めて高いカメラも買ったし場所取りもガチった結果最前列を取れた。

『裕一郎お待たせー』
「ん、お疲れ様」
『娘、緊張してたけど、かけっこで一番だったらお姫様のドレス買ってもらえるから頑張るって言ってたよ』
「ドレスなんて何着でも買うよ…可愛いな」
『親バカだ……あ、入場曲かかった！あれじゃない？』
「あれだ、うわ……可愛い……」
『ちょっとちょっとカメラ！』

可愛すぎて頭を抱えた。写真を撮るのをすっかり忘れてAのスマホでしか映像を残せなかった。年少クラスの出し物以外ではちゃんと自分の椅子に座って応援してる。ちょっと前まではじっと座ることも出来なかったのに、こういうことにも成長を感じる。

「座ってるだけでも可愛いな」
『末期か。あ、次年少さんだ。みんな可愛い〜娘が一番可愛いけど』
「お前も末期じゃねーか」

これを楽しみに来たかけっこの時間。大人だと短い距離に見えるけどこんな小さいと長く感じるんだろうな。

『娘だよ！頑張れー！ドレス買ってもらえるよ！』
「ちょ、声でかいって」
『あっごめん』

一生懸命走る姿に、大きくなったなぁという気持ちと愛おしさが爆発して感情が忙しい。
そうこうしてる間にゴールした。

『すごい！ねえ一番だったよ！』
「やばい…感動」
『泣きそうになってる！』
「だって、結構2位と差あったぞ。天才か…」
『すごいね…子どもの成長って早いね』

視界が涙で霞んでく。娘の俺を呼ぶ声も幻聴なのか聞こえてきた。とうとう末期か。

「ぱぱ！娘、いちばんだった！」
「はぁ…」
『ちょっとパパ！大丈夫！？』
「なんか娘の幻聴が…」
『いやいるから本人！パパ感動して泣いちゃった』「泣いてねーし」

娘にとって初めての運動会はこうして幕を閉じた。
帰りにドレスを見に行こうかと思っていたけど、抱っこしてる間に眠って、家に帰りついてベッドに寝かせたら起きて、泣き出した。

「ええ、ごめん起こして」
『起こしちゃったの？』
「おきちゃった…ぱぱきらい…」
「え…！？」

そこで目が覚めた。
夢だったらしい。

『あ、おはよ。なんかうなされてたよ』
「や、うん…悪い夢見た」
『ふーん』

いつか「パパ嫌い」と言われてしまう日が来るんだろうか…一生来ないでくれ……

包まれた手（リク）→←パパがナンバーワン(リク)

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す